表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救いを貴方へ ~痛みの先に~  作者: 湘南乃炎
最終章 歩みの果てに

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/108

五話 糸口

少々長くなりました

「ルシア!」


俺の叫び声が、戦場に反響した。

神様から与えられた力が、今こそ使えと言わんばかりに、内側から溢れ出す。


俺はその祝福を、体から剣へと這わせるように纏わせていく。

今までに感じたことのない、全身を支配するような全能感が駆け巡った。


そして、迫り来る触手へ向かって――

一閃。


先ほどまでの硬さが嘘のように、触手は真っ二つに断ち割れた。


「祝福だ!

皆の剣に、祝福を纏わせるんだ!」


ルシアに与えられた祝福は、今までとは比べものにならないほど強く、

不死人の浄化だけでなく、神性にすら干渉する力を宿していた。


「は、はい!」


俺の声に呼応するように、仲間たちの剣が次々と光を帯びる。


それを阻もうと、ルシアへ伸びる触手に、師匠と父様が立ちはだかった。

見事な連携と剣さばきで、触手を次々と切り伏せていく。


「まじか……本当に切れたぜ……」

「ダレン! このまま畳み掛けるぞ!」


父様の叫びに応え、俺は光を纏った剣を携え、ヴォイドへと駆けた。


並走するクラリスと、一瞬だけ視線を交わす。


「忌まわしい光だね……

それにタナトス、余計なことを言うんじゃないよ」


迫り来る触手を切り伏せる俺たちを見下ろしながら、ヴォイドは呟いた。


――ヴォイドを目前に捉えた、その瞬間。


闇と共に、彼の姿は虚空へと溶けるように消えた。


「なっ!? どこいった……」

「消えた……?」


俺とクラリスが立ち尽くした、その直後――


「――がはっ……!」


背後から、誰かの苦悶の声が響いた。


振り返ると、

そこにはタナトスの首を片手で掴むヴォイドの姿があった。


「今の一瞬で……移動、したのか……」


気配も、闘気も、何も感じ取れなかった。

理解が追いつかない動きに、全身が総毛立つ。


「タナトス……

君には期待していたんだけどね。

結局、幹部たちは皆死に、最後の君も私を裏切るんだから」


「ヴォイド……様は……

私たちにとって、希望……でした……

それでも……慕っていました……

だから……こそ……今の……ヴォイド様は……見て、いたくない……」


首を掴まれながらも、必死に言葉を紡ぐタナトス。


一瞬だけ、ヴォイドが視線を落としたように見えた――

だが、それは錯覚だった。


「ぐっ……! あっ……が……」


首を締め上げられ、タナトスの声が掠れていく。


「もういいよ。タナトス」


「私には……あなたがいて……救いが、ありました……

いつか……ヴォイド様にも……救い――が……」


その言葉を最後に、タナトスの体から力が抜けた。


ヴォイドは静かに手を離す。

骸となったタナトスの体は、音もなく床へ崩れ落ちた。


「悪いね。

少し邪魔者をどかしただけさ。

さあ、続けようか」


何事もなかったかのように、ヴォイドはそこに立っていた。


「気をつけろ!」


俺は虚無の眼差しがこちらを向いた瞬間、叫んだ。


だが、その僅かな一瞬で、

ヴォイドは口元を歪め――消えた。


まただ。


考える暇もなく、俺は本能で背後へ振り向き、剣を振るった。


――剣先が、受け止められる。


虚無の闇を纏った腕によって。


「君には、やはり感じるのか」

「なんなんだ……その動きは……」


剣は押し込めず、拮抗したまま。

ヴォイドは、愉しげな笑みを浮かべていた。


「明かすまでもないだろう。

君も、きっと分かっているはずだから」


そう言った瞬間、ヴォイドは再び虚無へと溶けた。


剣は空を斬り、何の手応えも残さない。


「ダレン!」

「皆! 不用意に動くな!」


そう叫びながらも、ヴォイドの居所は分からない。


消えてから、永遠のように感じる一瞬が続く。


――探せ。

――やつの“在り処”を。


俺が反応できたのには、理由があるはずだ。


俺は目を閉じ、ヴォイドを感じ取ることだけに意識を集中させた。


この世界に来てから、幾度となく繰り返してきたこと。

闘気を巡らせ、空間へと根を張り巡らせる。


積み重ねてきた「空間認識」は、

いつしか意識せずとも発動できる域に達していた。


さらに、闘気への理解を深めた今の俺なら――


感じる。


この空間を這い回るように漂う、虚無の痕跡を。


それは、前世で感じてきた、

底知れない“何か”と同質のものだった。


俺は即座に体を動かし、闘志を燃え上がらせる。


床を蹴り、駆け上がり、剣を振りかざす。


クラリスの目前に差し掛かった、その瞬間――


ヴォイドが、姿を現した。


「ダレン!」

「クラリス、下がってろ!」


それまでヴォイドの気配に気づけなかったクラリスが、驚愕の表情を浮かべた。


「やはり分かるか。

君も彷徨ってきたんだろう? 虚無の中を」

「よく分からないが……きっと、そうなんだろうな」


俺の剣を受け止めながら、ヴォイドは愉しげに笑った。


「やはり、君を負かすことこそ意味がある」

「そっくりそのまま返すぞ」


俺は纏わせていた祝福の光を、さらに強めた。

力を増した剣で、ヴォイドを押し込む。


その瞬間――


「どりゃあ!」


師匠が気配を消し、背後から斬りかかった。

だが、寸前でかわされる。


しかし、その先には――


「光剣!」


これまで以上に神々しい光を、クラリスが放った。

だが、その光剣はヴォイドのかざした闇に吸い込まれていく。


「本当に、鬱陶しいね」

「今だ! 畳み掛けろ!」


そこへ父様も加わり、一気に攻勢へ転じる。

連続する剣撃が、ヴォイドを襲った。


再び姿を消すヴォイド――だが、


「考えてることは分かってるぞ」


孤立していたルシアを狙った一撃。

俺はそれを先回りし、剣で弾いた。


「ちっ……」


それまで飄々とした笑みを浮かべていたヴォイドの表情に、

ついに歪みが走る。


祝福を伴った俺の剣が、ヴォイドの黒い腕を押し込む。

纏っていた虚無は、確実に損耗していた。


――今しかない。


仲間たちが一斉に背後から襲いかかる。


ヴォイドは距離を取り、玉座へと瞬時に戻った。

俺は剣を構えたまま、祝福を絶やさず注ぎ続ける。

闘志と混ざり合った意思が、光をさらに強めていく。


「鬱陶しいよ……

本当に、君たちは!」


吐き捨てるような声と共に、

触手が一斉に俺たちへ襲いかかる。


俺へ迫るものを――


父様が切り伏せた。


「ダレンは、それだけに集中していろ」

「兄貴! 久しぶりの共闘だな!」

「ああ。息子を背にな」


口元に笑みを浮かべながら、

父様と師匠は触手を斬り払い、ヴォイドへと迫っていく。


「私もいること、忘れないでね!」


クラリスの声が響く。

三人の猛攻が、触手の大半を切り伏せた。


俺は、ただ一つに集中する。


先ほど以上に上乗せされた祝福。

横目でルシアを見る。


「私も、いますよ」


その言葉と共に、祝福はさらに高まり、

剣は煌々とした光を放ち、俺の体に力を満たした。


「行け! ダレン!」


俺は床を蹴り、一直線にヴォイドへと駆け抜ける。

押し上げるような風が、前方から吹き付けた。


「――舐めるなよぉ」


ヴォイドが低く呟き、

背から闇の手を五本、伸ばす。


それらは俺を捻り潰そうと迫った――が、


その瞬間、

俺を追い越すように、光り輝く矢が放たれた。


見ずとも分かる。フィデルの矢だ。


俺たちに追いつき、ルシアの隣に立ちながら、

光を纏った弓を引き絞っている。


放たれた光の矢は、闇の手を次々と破壊し、

俺の進む“道”を切り拓いた。


「いっけえええ! ダレン!」


俺は皆が作ってくれた道を駆け抜け、

ヴォイドへ向けて、剣を振り抜いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ