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救いを貴方へ ~痛みの先に~  作者: 湘南乃炎
最終章 歩みの果てに

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三話 道程

ついに、計100話到達です。

俺たちは、魔物を切り払った橋の上を駆け抜けた。

襲いかかる魔物だけを的確に排除し、最速で前へ進む。


「城門を抜けたぞ!」


その声と同時に城門を突破すると、次に待ち受けていたのは不死人の群れだった。


「ここは私が!」


ルシアが声を張り上げ、正面に手をかざす。

神より授かった新たな祝福の力。

闇を押し返すように放たれた光は、不死人たちを蒸発させ、痕跡すら残さなかった。


そのまま城内の奥へと一直線に駆け出す――が。


「ちっ――」


誰かの舌打ちが響いた。


視線の先。

遺跡の深層で現れる強敵――土人形。

それが、複数体。完全に待ち伏せていた。


俺が迎え撃とうと剣を構えた瞬間、横から伸びた手に制止される。


「ここは、俺たちに任せろ。ダレン」

「フィデル……いいのか?」

「こんな連中、すぐ片づけて追いつくさ。行け!」


その言葉に、俺たちは迷わず進路を変えず、入口へと駆けた。


背後から巨大な腕が振り下ろされる。

だが、足は止まらない。


飛来した矢が土人形の腕を凍結させ、動きを封じた。


「おめぇら! 探索者の意地を見せてやれ!」


フィデルの怒号とともに、探索者たちの戦闘音は次第に遠ざかっていった。


ーーーー


静まり返った城内。

響くのは、俺たち自身の足音だけだった。


死角から現れる魔物を処理しながら、奥へ、奥へと進む。


「にしても、広すぎじゃねぇか。どこに首魁がいるか分からねぇぞ?」


師匠の言葉に、俺は静かに首を横に振った。


「いや、問題ない。場所なら……わかる」


断言した俺の言葉に、皆が怪訝そうな顔をする。

だが、ルシアだけは顔色を悪くし、小さく頷いていた。


先ほどから感じ続けている異様な力の奔流。

城の奥へ進むほど、それは濃く、重くなっていく。


神の力に近い――だが、どこか歪み、肌にまとわりつくような異質さ。

俺は冷や汗をかき、喉を一度鳴らした。


「……止まれ、ダレン」


父様の手が俺を制した。


その瞬間、皆が足を止める。


漂う異質な気配に、今まで気づかなかった。

闇の奥から、這い出るように人影が現れる。


全員が即座に武器を構え、警戒する。


そして――闇の中から、ついに姿を現した。


「ダレン・クローヴァン……」


その呟き、その姿。


「タナトス……」


ペンタグラムに残る、最後の幹部。

帝城襲撃の折から因縁を持つ相手だった。


「……やはり、あなたでしたか……」


タナトスはそう呟くが、誰も応じない。

空気が張り詰め、硬直した時間が流れる。


多彩な遺物を操り、行動の読めない敵。

こちらは五人――数では優勢だが、油断はできない。


やがて、タナトスが動いた。


ゆっくりと身を屈める動作が、やけに鮮明に目に映る。


そのまま膝をつき――


「――ヴォイド様に、どうか……

……救いを、与えてください……」


俺たちに向けて、跪き、深く頭を下げた。


ーーーー


「……ん……?」

「どういうことだ……?」


タナトスの不可解な行動に、俺たちは一様に困惑の色を浮かべた。

だが、罠や時間稼ぎの可能性を疑い、誰一人として警戒を解くことはない。


それでも――あまりにも無防備な姿に、思わず小さく嘆息が漏れた。


「どういうことか、説明しろ。タナトス」


俺の言葉に、タナトスは顔を上げることなく、膝をついたまま静かに語り始めた。


「ヴォイド様は……飲まれてしまったのです……」


その一言から、彼はヴォイドの“現状”を語り出す。


「ギノ鏡……我々は、神と対話できるとされる遺物を回収しました」


その名に、俺は僅かな既視感を覚えた。

どこかで聞いたことがある――俺たちが使ったシンノ鏡に、響きが似ている。


だが、それは根本的に異なるものだった。


「その神は――神と呼ぶにはあまりにも歪んだ存在。邪神でした。

ヴォイド様は、その力に飲み込まれ……今は、ただ破壊だけを求め、苦しみ続けているのです……」


タナトスの表情は依然として見えない。

それでも、その声には確かに――主を案ずる痛切な感情が滲んでいた。


しかし――


「元々ヴォイドは、破壊を目的としていたはずだろ?

結局、何も変わらないじゃないか」


俺の問いに、タナトスはゆっくりと顔を上げた。

その表情は、痛ましいほどに歪み、悲嘆に満ちていた。


「……いいえ。ヴォイド様は、破壊の先に“創生”を見据えておられました。

ですが今は……破壊そのものに囚われている。ただ壊すことしか、できなくなっているのです」


「それが……この異様な雰囲気の正体か……」


胸に引っかかっていた違和感が、ようやく腑に落ちた。

城内を満たす、神性に似て非なるこの力――。


だが、次に語られた言葉に、俺は思わず眉をひそめた。


「……私も、協力します。

ヴォイド様を救える可能性があるのなら、どのような形であろうとも……」


「どうする、ダレン。信用できるのか?」

「正直、背中を任せられる気はしねぇな……」


師匠は、判断を委ねるように俺を見る。

だが、それは容易に答えを出せる選択ではなかった。


重く張り詰めた沈黙の中、聞こえるのは――

跪いたまま答えを待つ、タナトスの微かな息遣いだけ。


その時だった。


「……私は、いいと思いますよ」


虚空を裂くように、ルシアが静かに言った。


「嘘をついているようには……感じません。

確信はありませんけど……でも、なんとなく」


「まあ、確かにね。

距離を取って前を歩かせて、様子見ってことでいいんじゃない?」


クラリスも軽く肩をすくめるように続け、重苦しかった空気は、霧が晴れるように和らいだ。


「……そうだな」


俺は小さく息を吐き、覚悟を決める。


「最初から、俺たちの目的は変わらない。

二人の判断を、信じよう」


そう言って、俺はタナトスの前へ一歩踏み出した。


「顔を上げてくれ」


「……よろしいの、ですか……?」


「勘違いするな。

お前を信じたわけじゃない。――この二人の判断を、信じただけだ」


釘を刺すように告げても、タナトスは堪えきれないように僅かに涙を滲ませ、

先ほどよりもさらに深く、頭を垂れた。


「……恩に着ます……」


その声は、震えていた。


こうして――

俺たちの一行に、一時的とはいえペンタグラム最後の幹部が加わることになった。

いよいよクライマックスですね。

世間はクリスマスですが....


予定ある人もない人も、今年最後を謳歌しましょう

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