#23 4人でゲーム!
俺は山田恵。ゲームと人間が好きな高校三年生だ。いつもは、江野畑っていう素直じゃない奴と一緒にいるが、今日は友達の藤井って奴の家にゲームをしに行くことになった。一緒に行くのは賽瓦っていうゲーム友達だ。賽瓦と友達になったのは今日なんだけどな。なんか、三河とめちゃくちゃゲームの話してたから「それなら一緒に藤井の家に行くか?」って誘ったら、最初は渋ってたけど藤井の家にfateの無銭舞 TIGER QUEST Ⅳがあるって聞いたらものすごい速さで首を縦に振ってた。ゲームへのこだわりがすごいなぁ。というわけで、放課後に藤井の家に来たわけだが…
放課後、藤井の家に来たわけだが、でかい家だな~。俺の家はそんなに小さくないと思うんだが、それと比べても敷地だけで8倍ぐらいあるな。金持ちすぎるだろ、藤井の親。そんなことを思っていると、一緒に来ていた賽瓦が、
「ねぇ、本当にここで合ってる?明らかに大地主って感じの家なんだけど...」
気まずそうに言う。確かになぁ。でも、藤井ってたまに世間知らずで金持ちって感じの行動してたから間違ってはいないと思う。表札にも藤井って書いてあるし。
「とりあえず、インターホン押してみるか」
ポチッとインターホンを押してみると、中から中学生っぽい男子が出てきた。藤井の弟かな?
「あら、こんにちは。ここって、藤井宮の家であってる?」
すると、その男子は事情を理解したようで、すぐに藤井を呼びに行ってくれた。今思い出したが、藤井には弟っぽい子がいると話していたな...なんで「っぽい」と付けるかというと、聞いた名前だと苗字が違うし、藤井自身も「ほぼ弟」と言っていたからだ。その時は深く聞かなかったが、もしかしたら複雑な家計なのかもしれない。彼の名前はおそらく、円城寺カイト。かなり小さいころから付き合いがあったと話していたな。
「お~い、山田!賽瓦!遊びに来てくれたんだね!」
玄関で待っていると、藤井が笑顔で出迎えてくれる。それはいいんだが、後ろにいるカイト君?の目がちょっと怖い。賽瓦はそもそも、藤井とあまり話したことがないようで俺を盾にしてくる。藤井に対してそんなビビる必要ないだろ。かわいそうな奴...と哀れみの目を賽瓦に向ける。すると、賽瓦は小声で、
「ちょっと!なんであんなやばそうな子がいるって教えてくれないの!あの子、こっちに対して敵意みたいなの向けてくるんですけど!」
と俺の腕を思いっきりつかみながら抗議した。えぇ...カイト君がそんな子だって知らないし...いきなり敵意向けてくるって自意識過剰なんじゃないか?そう思っていると、藤井が答える。
「二人ともこそこそ話してどうしたの?あ、カイトのこと?大丈夫だよ。いつもいい子にしてるから。ね?」
藤井が振り返ってカイト君を見ると、指で脇を突いてくる藤井に対して若干うざそうにしながらこっちに向けてなにか優越感のようなものを含んだ視線を向けてくる...賽瓦の言っていたことは本当らしい。江野畑と似たにおいを感じる。やってることと言ってることが違うところが特に。まあ、いいだろう。そういう子もいる。それよりも、すぐにでもゲームをしたい。
「ああ、大丈夫。内緒の話をしていただけだ。それよりも、家に入っていいか?ゲームしようぜ」
カイト君の視線は後で考えるとして、今はゲームをすることにした。
最初はマリオパーティーをみんなでやることにした。賽瓦はすぐにでも無銭舞 TIGER QUEST Ⅳをやりたいと言っていたが、さすがにみんながいるのにそれをやりに来たとは言えないらしく、渋々マリオパーティーに参加した。ミニゲームでは俺が圧勝することが多かったが、なぜか全員敵なはずなのにたまにカイト君が俺を狙い撃ちするようなアイテム使いをしたり、賽瓦が笑いながらミニゲームで俺を妨害することに全力を尽くしたりして、結局俺は3位になった。なんなんだこの二人は。それを見て藤井はもっと爆笑していたし...人をいじめて楽しいか!楽しいよね。ゲームだし。
そんなこんなでマリオパーティーが終わると、次は桃鉄をプレイすることになった。桃鉄では、さっきみたいなプレイングはしなかったが、なぜかカイト君が藤井だけを狙わないようにプレイングしたり、それにむかついた俺と賽瓦が藤井を狙ったり、さらにそれに対して藤井がうんちで俺を閉じ込めたり...めちゃくちゃなゲームだった。だからこそとても楽しかった。
女子二人はなにか女子だけの話があるようで、男子である俺たちをリビングに残して藤井の部屋に向かった。もっとも、藤井の部屋はいくつかあるようでどの部屋に入ったかは分からないが。仕方ないので、カイト君と「はじめてのWii」でタンクを遊んでいると、段々とカイト君が話し始めた。
「...あの、山田さんでしたっけ?ねえち...藤井とはどういう関係なんですか?いや別に、ただのクラスメイト以上の関係になっているとか疑っているわけじゃないんですけど、幼馴染としてはちょっと気になって」
あ~~、やっぱりそういう感じなんだ。うん、まあちょっとそうなんだろうなとは思っていたけど。
...ここは適当に答えると勘違いしそうだな。それはそれで面白いだろうけど、この子相手にはまずそうだし普通に答えよう。
「ただの友達だよ。ゲーム友達。恋愛感情とかはないかなぁ」
かわいいとは思うけどね。敵戦車を破壊しながらそう答える。表情は見ないが、カイト君は少し安心しているように感じる。
「そうですか。それは良かった。...ちょっと待って。それって藤井に対して魅力を感じてないって意味じゃないですよね?」
別に自分は全然気にしてませんけど?みたいな空気を出しながらそれを言われても全く説得力ないが、まあここも正直に答えてあげよう。
「いやいや、彼女の魅力はよくわかっているつもりだよ。明るくて、優しくて、たまに空気を読めないけど、そこもいいと思う。ただ、俺より彼女にふさわしい人はいるんじゃないかと思っているだけ」
こうでも言っておかないと、カイト君納得しないだろうからなぁ。実際、藤井は魅力的だけど、そういう好きじゃないし。答え終わると、カイト君が何か安心したようなため息をついて、
「そうですよね。藤井ってだらしないし、空気読めないし、勉強もあんまりできないし、魅力薄いですよね」
ハハッと笑いながらそう答えるカイト君。魅力あるって言ったり、ないって言ったりどっちなんだい!
そんな俺の心の声なんぞ聞こえないカイト君は楽しそうに続ける。
「知ってます?藤井って朝全然起きれなくて、いつも家政婦さんとか僕に起こされてようやく起きるんですよ?...最近は結構起きれるようになったんですけどね...あと、昔は遊んでくれる友達が多かったんですけど、中学ぐらいからだんだん友達が減ってその代わりにずっと僕と遊ぶようになったんですよ!可哀そうですよね。だから、友達ができてほしいって僕もずっと思ってたんですよ。でも、今は友達がいるみたいで...うん、うれしくはあります...ほかにも、一人だと家でゴロゴロするのも寂しいって言ったり、よく家に勝手に入って僕の漫画勝手に読んでたり、料理もあんまりできなかったり、たまに夜泣いてたり、慰めてもらわなきゃずっと起きてたり、本当に手間がかかる姉ちゃんですよ!ねぇ、山田さんもそう思いません?」
めっちゃ楽しそうに悲しいこと言うじゃん。それ自分で言ってて何も思わないの?...いや、まあ言いたいことはわかるけど、すごいなぁ。藤井が手のかかる女子なのは間違いないし、カイト君が面倒見てるのはよくわかったけど、それ以上にカイト君自身が面倒って自覚したほうがいいよそれ。根はいいんだろうけど、どっかで相当ねじ曲がったんだろうなあ。適当に肯定しておこう。
「そうだね~、そんな面倒な女なんだね!藤井って!それじゃあ、別にそこまでかまってあげる必要なくない?カイト君が面倒見てたら藤井が成長しないし、自分で直させなきゃ意味ないよね?」
前言撤回。この子には自分がどういう感情を持っているのか自覚させたほうがいいな。この反撃に対して、カイト君は30秒ほど沈黙したのち、ゆっくりと口を開いた。
「...そうですよ。姉ちゃんは本当に面倒くさい女なんです!でも、別にいいところがないわけじゃないし、悪いところもいつか直せればいいかなって...」
「いつかじゃなくて、日常の中でゆっくり直させればよくない?いつかいつかって、先延ばしにしてたら変わらないよ。それにそんなに面倒な相手とか嫌いでしょ?付き合ってあげるだけ損だよ」
予想外の反撃に対して、段々口数が少なくなるカイト君。これはちょっとかわいそうだったかな?いや、まだだ!まだ終わってない!カイト君が震えながら口を開いた!
「それはそうだけど...別に欠点を直さないほうがいいっていうか...それに、嫌いなんて言ってませんよね?勝手に決めつけないでください!」
逆切れっぽくなってきたな。年下をこれ以上いじめるのも気分がよくないし、今日はこれぐらいにしておくか。
「わかったわかった。カイト君が藤井を大好きなのはわかったから。とりあえず、自分が藤井をどう思ってるのかぐらいは考えたほうがいいよ」
ブチギレそうだったカイト君の顔が、別の意味で赤くなる。え、あれだけ言って自分が藤井をどう思っているのかあんまり考えたことなかったのか?
「別に好きだなんて言ってないじゃん!」
顔真っ赤になりながら言い放つカイト君。マジで自覚してないのか?
「じゃあ、嫌いって言える?」
「...」
「...」
言えないみたいだ。
最初からずっと藤井のこと大好きなのに、変な言い方しかできないからこじれるんだよねぇ。歪みがひどいな。俺は第三者だからこれ以上は言わないほうがいいだろうけど、多少は正常な関係になってくれればなぁ。
「あ!カイト!なんで泣いてるの!?」
藤井たちの話が終わったようで、リビングに戻ってくると泣いているカイト君を目にして真っ先に俺のことを疑う。当然といえば当然だが。だが、カイト君はどうやら何か思ったらしく、藤井に対して小声で話した。
「...なんか自分がひどかったらしくて泣いてるって...山田は別に悪くない?あんたたち二人しかここにいなかったのに?」
珍しく人を疑う藤井。あ~、カイト君がゆがんだのはただ単に性格がひどかったからじゃなくて藤井のせいもありそうだな。っていうか何かあるなこれ。ただ、これ以上は首を突っ込まないでおこう。
「ねえ、あんた中学生相手に何したの?」
賽瓦が何か事情を知ろうと話しかけてくるが、抽象的な言葉でごまかす。
「別に。ちょっと話に乗ってあげただけ」
納得はしていないようだが、噓を言っているわけでもないことはわかってもらえたようだ。
「う~ん、山田がいじめとかするとは思えないし、何かあるんだろうけど、カイトがこれじゃ話聞けそうにないなぁ。ごめん、二人は帰ってくれない?これからカイトとゆっくり話すから」
藤井がそう言う。時間も時間だしそろそろ帰ろうと思っていたところだ。
「だって。帰ろうぜ賽瓦」
俺が鞄を持ちながら賽瓦にそう言うと、藤井の家を出ることを名残惜しそうにしながら賽瓦は付いてきた。
この日はスカッとしない気分だったが、カイト君のためを思っての言葉が通じればいいなとは思った。
おまけ:
この後カイトは、藤井に慰められながら寝ますが、寝るまでの間に今までの自分を振り返って藤井の友人にひどいことをしたこと、そして自分が藤井を大好きだということを受け止めます。ただ、藤井にそれを言えるかというと絶対言えないので、結果的に自分を傷つけることになります。ですが、これが彼の成長を促したのは事実です。
藤井は藤井で、カイトが素直に話してくれないので真相はわからず、山田に対して少し距離をとるようになります。