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#7 欲に溺れる高校生

若干頭が足りない高校生の山田と、プライドが高く面倒くさい江野畑の物語。

帰り際にふと気になって江野畑に話しかけてみた。前々から面白そうなやつだと思っていたので、いつもどう帰っているのか教えてもらおうと思ったのだ。

「なあ、江野畑。お前いつもどうやって帰ってるんだ?」

江野畑は「は??」と言いたげなあきれ顔で言い返してくる。

「なんであんたなんかに私のことを教えなきゃいけないわけ?」

こいつ、自分がネットで知らない人間に自慢しまくってる割にはクラスメイトには教えようとしないのか。

「いいじゃん。ちょっとぐらい教えてよ。お前のことが気になるんだって」

無論、面白そうという意味でだが。江野畑のような性格であれば、ここは良いように勘違いしてくれるだろう。

「え~?え~~...あんたに好かれても私に良いことなんか一つもないんだけど。」

そう来たか。普通の人間であれば他人に好かれることはうれしいことだと思うが、ここで自分のメリットを考えるあたり、やはり江野畑は面白い。

「そうか~...う~ん...仕方ないなぁ。手持ちだと今朝買ったカロリーメイトぐらいしかないんだがそれで...」

すると江野畑はおなかが空いていたのか、速攻で返事をした。

「いいわ。教えてあげる。何が聞きたいの?」

言いながら俺の手から奪ったカロリーメイトを貪る江野畑。早いな。プライドとかもう少しないのか。...若干引いてしまったが、本題に戻る。

「そうだな。まずは、この後どうするつもりだったのか教えてくれ」

一本目のカロリーメイトを食べ終わった江野畑が返事をする。

「今日は、お腹すいてたから買い食いする気だったのよ。まずは、カフェでコーヒーを頼んで写真を撮って、それをネットに挙げたらサイゼリヤで3000円分ぐらい食べるつもり」

今カロリーメイト食べてるのに?と言いたい気持ちをグッと抑えて続いての質問をする。

「コーヒー飲む必要あったか?最初からサイゼリヤ行けよ」

全てのカロリーメイトを食べ終わった江野畑は肩をすくめて、「わかってないわねぇ」みたいな顔をした後、返事をする。

「サイゼリヤで写真撮っても、ただの貧乏学生にしか見えないし、わざわざそんな写真撮るわけないでしょ?あと、まだカロリーメイトあるわよね?寄こしなさい」

まあ、そんなことだろうとは思ったけどさ。カロリーメイトを渡しながら江野畑の手を見てみる。え?この学校ってマニキュアしてもいいですよね?と言うかのような派手に盛り付けられた爪。マジか。先生が優しくてよかったな。じゃなきゃ速効生活指導だぞ。

「そうか。えっと、その計画に変更はないのか?」

今、普通の成人男性でもだいぶおなかいっぱいになりそうなレベルでカロリーメイト食べてるけど。

「そうね、さすがに計画は変えざるを得ないわ。コーヒーはやめて、映える場所で撮影した後、サイゼリヤであんたにおごってもらう」

????????お前は何を言っているんだ?それだけ食べてまだ食べるのか?だから、胸と尻がでかくなるんだよ!!!!

「いや、質問いくつかに対して要求多すぎだろ。おごらねぇよ?っていうか、そんなに食べて太ることとか考えないんですか???」

強い言葉で最大限反論する。

「大丈夫!たまに運動してるし、ネットのみんなも太さこそ正義って言ってくれるから!」

自覚あったんだ。じゃあ余計絶望的じゃないか。いつか糖尿病なりそうだなこいつ…

「...わかったよ。仕方ないから付き合ってやるよ。ただし、帰りは一緒に帰ってもらうからな」

しぶしぶ了承したが、財布の中身がすっからかんになる幻覚を見て今度から絶対にこいつにおごらないと決意した。


帰り道、サイゼリヤに行くまでに寄った公園で江野畑が写真を撮ってくれと言い出した。インスタでは赤い夕焼け空が最近のトレンドらしい。

「しっかり撮ってよ。できるだけ私がきれいに映るようにね!」

「へいへい...わかりましたよ」

...こうやって黙ってれば普通に美人でタイプなんだけどなぁ…

思いながら写真を何枚か撮る。どれもうまく撮れたつもりだったが、どうも本人は気に入らないらしく、結局一枚しか採用されなかった。

「あんたって、写真を撮る才能ないのね。ちょっとがっかり」

悪かったな!写真を撮る才能がなくて!

「これからはたまに写真撮影してよね。こっちのほうが私がよく映えるから」

理不尽だなぁ、この女。...まあ、原因は自分にあるのだし、仕方なく従っておくか

「はいはい、気が向いたらな」

用が済んですぐに公園を出ようとする彼女を引き留めて、ベンチに座るように促す。

「なに?早くサイゼリヤ行きたいんだけど」

「いいから。せっかく夕日がきれいなんだから、たまにはこうやって眺めようぜ」

最初はジトーっとした目で見てくる彼女だったが、次第に夕日や自然を見つめるようになり、そのまま数十分を黙って過ごした。

かなりの時間がたって、少し肌寒くなってきた時、唐突に江野畑が口を開き、

「やっぱり、サイゼリヤはやめといてあげる」

そう言って公園を出て行った。俺はというと、少し頭を巡らせた後、

「そうか...良かったな」

と、独り言を言ってベンチから立ち上がり家に帰った。

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