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序章「アディーラ」

この作品は現在も続いているウクライナ紛争、またロシアの軍事作戦に於いて国家とは、また人間の命と人道、戦争の罪に関して筆者が考察を重ねたものです。日本においても日米安全保障や若き自衛隊員のことを想起し筆を起こしました。

  『海上自衛官 秋山航大の軌跡』


山本賢二



  序章「アディーラ」


 

 「もうそろそろ良いかもしれん……」

 私は腕時計を見ると車の外へ出た、外は大雨だった。


 11月にW℮bでチケットを予約しておいたイベントがこの近くの喫茶店で行われる。


 私の祖母はビジネスでロシア人との親交があり私は幼少の頃、祖母が日本へ帰って来る度に簡単なロシア語の単語を教えてもらっていた。また、小説『坂の上の雲』などでロシアへの憧れがあったのかも知れない。さらに郷里の愛媛県松山はロシアとの繋がりも深い土地柄だった。


 今から考えれば自分にはロシアを支持する素地が出来ていたのかも知れない…


 私は傘を開くと土砂降りの雨の中、指定されている会場へと足を運んだ。地面を叩く雨の跳ね返りであっという間に足は濡れた。


 会場は千葉市の中央区に在るとあるビルの二階だった。

 狭い階段を上って行くと既に参加者が数人ほど来ている。私はドアを開くとドアに付いた鈴がガラン、ガランと音を立てた。奥からロシア人らしい女性が出て来ると私は尋ねた。

 「時間が少し早いのですが、ここで待っていても良いですか?」

 「いいですよ、少しだけそこでお待ちください」とその女性は日本語で応対してくれた。

 私が入口の所で立っていると一段上がった店内に別の二人が現れダンスの練習を始めた。

 「ロシアの民謡か…」

 私は二人のダンスの手先の動きを注視しながら見ていると背後の入口のドアが開き、背の高いカントリー調のワンピースを着た若い女性が入ってきた。

 視線が合い、低くうなずくとアイコンタクトでお礼を言っているのが分かる。私はその人が今回のイベントの主催者のアディーラさんだと直ぐに気が付いた。


 彼女はYouTuberで今年ロシアから来日し、私の郷里の愛媛県松山へ転入して来たのだ。それは私が同地を離れ、現在住んでいる長野県北部に転出した時期と粗同時だった。私が転出した理由についてはいずれ語ることになると思う。



       ◆



 彼女の主催する団体名称は日露友好会。私が日本へ帰って来た時、動画サイトで彼女を見つけた。純粋に文化交流を目指す彼女の姿は今の世界情勢を鑑みた時に一筋の希望の光とも見えた。

 

 少しだけ待った後、イベントが始まった。


 タタールの民族衣装に着替えた彼女はロシアの有名なお祭りに関して話し出した。今回のイベントは彼女にとって最初らしく緊張が見え隠れしているがそれがとても健気に見える。


 ロシアの祭典、イワン・クパーラについて話が進んだ。


 とても日本の神社仏閣における神事や修験道に似たところがある。日本では神様に結び付くが向うでは男性女性の間柄の事が多いようだ。


 昼食を挟み参加者からの質問コーナーに入った。

 何人かの参加者からの質問があり、その中には私が聞きたいものもあったので私は黙ってそれを聞いていた。


 “何故、東京ではなく四国の、そして松山なのか?”


 彼女が言うにはビザと仕事の関係でそうなったようだ。また別の理由で東京近辺のような大都会では住みにくいと感じたようだった。


 時間は経ち彼女は最後の言葉として世界情勢(ロシアとウクライナの紛争)を考えた上で人々を一つにするような宗教が必要とも語った。



今回のイベントの最初にアディーラさんの付き添いの女性から政治の話はご遠慮くださいと言われ私も他の参加者もそれを聞いている。あくまでも文化イベントであることは日本人なら普通に理解できると思う。


ただ……、と私は思った。


私は自分に言い聞かせるように心の中で呟く。


(今回の戦争は政治を抜きにして宗教は語れない…)


これの物語はフィクションです。

物語に出て来る団体は一部、実在のものですが登場人物は架空のものです。

また、中に出て来る艦船、兵器等は架空の物が含まれています。

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