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暗涙の嘘  作者: 夢月 遊
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第三話

「とは言ったものの、派手にやると増援が来るやつだよなこれ」


 見えているだけで六人。もしかすれば、死角にもう何人か居るかもしれない。


「私とイオラスだけなら静かに強行突破できるけど……」


 今はレヴィアが居る。コイツも安全に通すとなれば……


「やっぱ殲滅しかねえな。よし決まり。行くぞ」

「お前らいい加減に俺の話を……」


 俺の合図と共に、シルフィが飛び出して行った。


「俺らは後ろからだ」


 コンマ数秒遅れ、俺もレヴィアを抱えたままシルフィの後を追う。


地操術(ちそうじゅつ)這蛇(はいじゃ)


 シルフィが走っている勢いのまま、一回転して地面に踵を叩き込んだ。


「喰らい尽くせ」


 衝撃で地面にヒビが入り、それは蛇のように門の方へと向かって広がって行った。

 災害レベルの脅威が迫っているとは露知らず。門に居る敵兵達は呑気にお喋りをしていた。


『この国も終わりだな。奇襲食らってこの有様だ』

『俺らの国が口だけとか思ってたんだろうな。そう勝手に思い込んだアイツらが悪い』

『それもそうか……って、何だよアレ』


 ようやく気が付いたようだ。

 今更遅いが。


『おい!こっちまで広がって来てるぞ!』

『落ち着け!ただの地割れだろ!』


 奴らの手前で地割れが枝分かれし、壁面へとその根を伸ばしていく。


「ただの地割れなわけねーだろアホ」


 次の瞬間、ヒビの隙間から無数の鋭利な岩が飛び出した。

 それらは的確に敵の方へと伸びていき、次々と敵を貫いていく。


『なん……ガハッ!?』

『逃げ……ゲバッ!』


 誰一人として逃されないだろう。

 長年一緒に居るからこそ分かる。今のシルフィに慈悲など無い。


「……イオラス。出番」

「おう」


 俺は更にスピードを上げ、壊滅状態の敵陣へと突っ込んで行く。


「死ぬ!風圧で死ぬって!」


 上がやかましいので放り投げてやろうかと思ったが、確実に死ぬと思うのでやめておいてやろう。


「冥剣ヴェレット。来い」


 そう呟くと、影から一本の剣が飛び出し、俺の手に収まった。


「俺達の平穏を壊した報い、その魂で償え」


 俺は目の前に剣を掲げ、魔力を込める。

 すると剣は鈍く光り、辺りを不穏な光で染め上げた。


『あ……あぁ……』


 突如、苦痛にもがいていた兵士達の動きがピタリと止まる。

 失われたはずの技術で造られた「冥剣 ヴェレット」。死の淵に居る者たちを纏めて葬る力を持っている。


「お……おい。何が起きたんだよ……」


 門の前で立ち止まると、目の前の惨状を見たレヴィアが困惑の声を上げた。


「ここまで来た以上は……レヴィア。お前も俺達の道連れだぞ」

「お前らが勝手に連れて来たんだろ!何が道連れだ!」


 それに関しては返す言葉もない。

 だが、今のこの国に居場所など無い。


「レヴィア、決めろ。俺達とこの国を抜け出すか、この国と命運を共にするか」


 この国は間違いなく滅びる。

 大した戦力も無ければ、他の国と同盟も組んでいない。

 力量の差があり過ぎるのだ。


「……孤児院だけ見させてくれ」


 寂しさと怒りが入り交じった顔をするレヴィアを見て、俺たちは「ダメだ」とは言えなかった。

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