誕生日
よろしくお願いします。
エドガーは激しく動揺していた。息子たちから誕生日会の招待状を受け取ったのだ。
冷たく当たってきた長男ヴィルヘルム。
生きていてとても嬉しいが時々ムカつく次男リヒター。
放任しすぎてどう接すればいいのかわからない末っ子アベル。
その三人から、エドガーの誕生日を祝うためにパーティを開くという招待状を受け取ったのだ。
戸惑いは大きいが、従来構ってちゃんのエドガーはいそいそと久しぶりの自宅に帰ることにした。
普段はアリサが怖くて寮に泊まっている。(ティアラとは定期的にお金を渡すとき以外会っていない。)
仕事を終え、外はすっかり暗くなった。家の戸を開けると、暖かな光で目が眩んだ。玄関ホールを抜け、ダイニングに向かう。部屋の中央にはダイニングテーブル、その上にカードが。
ワクワクして一歩踏み出すと、天井からケーキが降ってきた。
ケーキはエドガーに見事降りかかり、クリームまみれになる。
それを見てゲラゲラと大笑いするリヒター。
苦笑いするヴィルヘルム。
驚いているアベル。
息子たち三人が横から出てきて三者三様の反応をしていた。
そして笑いながら、テーブルからカードを取ってやって差し出すリヒター。
呆然として何も言えないエドガーを指差しながら『クソオヤジ』と言って再び笑い出すリヒター。
「期待はずれな反応だな。」
ヴィルヘルムは情けない父親の顔を見ながらそう言った。
この企画、実は発起人はアベル。
「あ、来週お父さんの誕生日だ。」
ブラックボックスの修繕作業をしながら『何あげようかな〜。』と言っていたアベル。
「え、あの親父にプレゼントあげてるのか? 」と、その生真面目さに驚くヴィルヘルム。
話を聞いて近寄ってきたリヒターが、
「パーティ、パーティ」
と言っている。発起人はアベルだが、パーティを悪戯に魔改造したのはもちろんリヒター。家に帰ってからいそいそと作業を始めていたが、アベルは内容を聞かされてはいなかった。
つまり、アベルは純粋にお祝いするつもりでパーティを企画した。
ヴィルヘルムは実はパパっ子なので、複雑な思いを抱えながらも関係修復のいい機会かと思い賛同した。
リヒターは、単純に面白そうだから賛同した。
カードにはそれぞれの文字でこう書かれていた。
『お誕生日おめでとう
クソオヤジ
全部食べてね』
エドガーがしてきたこと全てが許された訳では無かったが、父と子は少しずつ歩み寄ることができたのかもしれない。
読んでいただき、ありがとうございます。




