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リヒター②

よろしくお願いします。

モンスターの襲来の中リヒターが物見櫓に登ったところ、少女を見つけた。それはヴィルヘルムの親友の妹。リヒターの恋人。


リヒターは慌てて物見櫓の中腹まで駆け下り飛び降りる。


「ムボナ バドイポ? (何でまだ残っているの?)」


少女の元に駆けつけたリヒターが聞くと、少女は手に首飾りを握りしめ、半泣きでしゃがんでいた。


「コレ トリニ キタノ。」


リヒターが笑って、『そんなのまたいつでも届けに行ってあげたのに』と言うと、少女はまた涙を溢れさせながら首を振り振り『オカアサン モウ リヒター アエナイ 言ウ』とたどたどしくも、懸命に話す。


モンスターはもう到達してしまっている。北西の地はだいぶ潰されてしまった。北東の居住地であるこの地も安全とは言えない。とりあえずムバオの民を追いかけながら話を聞くことにした。


どうやら逃げる途中、どうしても首飾りを取りに戻りたくて、小さな弟妹の抱っこひもを留め直している両親の目を盗んで、一人引き返してきたそうだ。


仕方がないので、と言うよりもこれ幸いとリヒターは彼女を送り届ける事にした。実は一人で北の森まで冒険したこともあるし、森と草原の境界線を通ればあまり危険がないことも分かっていた。


適当に食料を集めて適当な布でまとめ、それを背負って彼女と二人で草原を行く。リヒター僅か五歳。彼女は一つ上の六歳。彼女の足に合わせて進むので、二日遅れで集団に追いついた。


合流した先でわかったことだが、両親は彼女は先に行ってしまったものと思い、むしろ慌てて先に進んで行った。領地から逃げ出したムバオの民は百人を越え、その集団は縦に長く伸び、幼子を三人抱えながら先頭に辿り着くのに難儀した。


しかし、先頭にも娘が居ない。父親が単独で探しに行こうかとも考えたが、母親一人で三人を抱えていくのは無理があった。周囲の手を借りて何とか父親だけでも引き返そうとしている中で、リヒター達との再会を果たせた。


感動の再会ではあったが、困ったのは今度はリヒターをどうすればいいのかと言うことだった。


北の森から領地までの道のりは、モンスターが更に増えて危険だった。若い衆を共につけて領地へリヒターを送り届けることもできたが、そうすると今更顔を出したムバオの民を無事で返してくれる保証がなく、若い衆の身が危険だった。


それでも一族の子を送り届けてくれたこの勇敢な小さな勇者を送り届けることで話がまとまりかけた頃、リヒターがこの地に住むと言い出した。


理由は単純。彼女と一緒にいたいと言うこと。そしてなんだか面白そうだと言うこと。血の気の多いリヒターにとって、狩猟民族であるムバオの民の生き様は性に合ったのだ。


こうしてリヒターは、ムバオの民として生きることになった。やがてミミを娶り、三人の子を持った。大きくなってからは一人で故郷に戻ることもできたが、なんだか母親に怒られそうと言う理由で戻ることはなく、狩猟生活に明け暮れていた。




アベルのおかげで領地に帰った後もなかなか実家に顔を出すことができず、数日経ってから母親に会いに行った。さんざん泣かれて、やっぱり怒られた。


『門限を破ってごめんなさい』と言うと、更に怒られた。






ちなみにリヒターは格闘センスがずば抜けている為、ヴィルヘルムよりも実力は遥かに上だった。そんなリヒターが小説の中でヴィルヘルムに負けた理由。それは、リヒターが戦う相手の鎧兜姿の男が、兄のヴィルヘルムだと気がついたから。


普通ならそれでも圧勝して、気絶でもさせてから話し合いでもすればよかったのだが、この時は激戦の上リヒターがとどめを刺そうとした瞬間だった。無理やり剣の軌道を変えたせいで、隙ができた。そして致命傷を負うことになった。


また、スキルチェックはしていなかった。する前に領地を出てしまっていた。もしスキルチェックをしたなら、判明した結果は『狂戦士』。そして妻となったミミのスキルは『猛獣使い』。


ブラックボックスの修復作業を兄弟がすすめる傍ら、今日も嬉々としてモンスター狩りを楽しむリヒターであった。

読んでいただき、ありがとうございます。

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