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母親

よろしくお願いします。

アベルは自分をないがしろにすることが多かった。それは本人の生来の性質も多少はあったが、母親からの影響によるものも大きかった。




アベルの母親ティアラは、他力本願で生きている人物だった。彼女は体が弱く、彼女の母親も体が弱かった。彼女も、その母親も、とびきりの美人と言うわけではないが可愛らしい顔立ちをしており、体型は男性から特に好かれるモノを持っていた。そして特別甘え上手だった。


体が弱く、可愛がられる外見で、甘え上手。ティアラの家系はその殆どが誰かに依存して生きていく性質たちだった。


病弱な人間が誰かの手を借りて生きる場合、その殆どが感謝と遠慮を感じながらも懸命に生きるだろう。しかし、彼女の家系は誰かに守ってもらうのが当たり前だと考えて生きてきていた。そして何故か、守る人と言うのは現れ、一族が絶えることはなかった。




そんなティアラにとって、エドガーは都合の良い存在だった。酒場に行ってエドガーが居れば嬉しくて笑顔が溢れた。また何か奢ってもらえる。


ティアラは相手が気分が良くなってモノをあげたくなる言葉をたくさん知っていた。母親から幼い頃からたくさん教えてもらっていた。エドガーはちょろい人間だった。


そんな相手とは子供を作りなさいとも言いきかせられていた。そうすればずっと面倒を看てもらえるからと。逃げられたら子供は教会に預けなさいと。




そんなティアラにとって、アベルとは面倒をみる存在ではなかった。自分の子供であると認識していたが、共に誰かに養ってもらう存在だった。


意外なことにティアラは自分の母親の面倒は懸命に看ていた。親を守ることは一族の家訓だった。つまり、アベルはティアラを看るための存在だった。


アベルのことが嫌いなわけではない。小さなもの好きのティアラはアベルのことが可愛いと思っていた。そのためどこにでも連れ回して、周りの人間に世話をしてもらっていた。


子供を可愛がっていると、おじさんだけでなくおばさんからも可愛がってもらえることを学習した。


アベルが少し大きくなると、連れ回すのが面倒になり、留守番させることが増えた。ティアラには食事を作り置きする頭も特になかったので、アベルは教会に行って炊き出しを食べることを覚えた。炊き出しのない時はたいてい備蓄してある非常食を食べていた。




ある時、エドガーが本邸に行くといった時ティアラはとても嬉しかった。大きなお屋敷だと聞いていた。


御馳走が食べられると思った。


行ってみてがっかりだった。御馳走は出ないし、屋敷も古臭かった。母親の所に行く約束もしていたので、すぐに屋敷から出ていった。


エドガーは陰気臭いけれど、見た目はいいし、定期的にお金をくれる約束(養育費)をしてくれたので、ティアラはそれで満足だった。






性善説、性善説。そのどちらが正しいのかはわからない。しかし、ティアラは生まれてからこの方ずっと性根が腐っていた。


家族に蔑ろにされながら、アベルはすくすくと育っていく。

読んでいただき、ありがとうございます。

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