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三層㊴ 封

 大剣がリッチャンから少しそれた地面に着地し、土塊が散弾のようになってまき散らされるかと思うと、地面にぶつかる着前にアイリッシュが聖剣で上空に打ち上げた。


 大剣は切っ先を天に伸ばすと、泡の外に出て行く。


 一応の危機は過ぎたが、イルマスはまだやる気だろう。

 アイリッシュの手を借りて取り押さえる必要がある。


「アイリッシュ、イルマスを取り押さえてくれ」


「私ですか……。確かに他にいないですよね」


 アイリッシュは一度リッチャンを見て、考え直した風になるとイルマスに近づいていく。

 すると夜が明けたのか陽の光がこちらに流れこんできた。


 アイリッシュはそれを見ると少しだけ表情を明るくすると光を集めて鎖を作り始めた。

 完成すると遠隔で操作してイルマスに巻き付けていく。


「イルマスさん……」


 途中でアイリッシュは何かに気付いたようで手を止めた。

 見るとイルマスの手が半ばからなくなっていた。


 加減をする余裕はなかったからな。

 当たり前の結果と言えば結果なのだが、少し後悔が残る。

 俺がパワーショットの習熟度をもう少し上げていれば、避けられたことだ。


 不測の事態に備えて習得した戦技は練度をあげておくことにしよう。


 とりあえずイルマスには高位のプリーストに会うまでは魔力伝導率の高い義手で我慢してもらうほかない。


 そんな事を細々と考えているとリッチャンがイルマスの方に歩を進め始めた。


「おい、リッチャン。イルマスを下手に刺激するようなことはよしてくれ」


 リッチャンはこちらの呼びかけに応じず、黙って進んでいくとイルマスの前で止まった。

 イルマスは案の上リッチャンを見るとオーラを濃くして、ナイフを握った片方の腕を伸ばし始めた。


「アイリッシュ、鎖をもっと引き締めてくれ!」


 言い知れぬ不安に襲われてそう進言すると、更にオーラを濃くしたイルマスが鎖を引きちぎって、リッチャンに刃を突き立てた。

 奴の激情がそのまま表出されたように赤黒い軌跡を描いてリッチャンの首に、刃は向かう。


 刃は首に届く直前で封をされた曲刀に防がれた。

 アイリッシュの鎖が再びイルマスを拘束し始めると、曲刀の封が徐に解け始めた。

 リッチャンは裸になった黒い曲刀を持つとイルマスの欠損した手を切りつけた。

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