三層㉟ 尊重
万象のリード。
伝説に出てくる最も力の強い魔王の名だ。
リッチャンがそれを名乗っている。
はったりにしては表情も目も微動だにせず、らしくない。
おそらく本当の事をいってるのだろう。
「今のはったりですよね、ユースケスさん?」
「はったりに決まってるだろう。真に受けるな」
だがアイリッシュに伝えてもパニックにしかならないのではったりということで通す。
リッチャンの性格を考えて、おそらく大昔の恨みやつらみを今もひきづっていることはない。
ここで俺らを血祭りにあげようという気はないだろう。
だが馬鹿真面目臭いところが時々に散見できたことから考えると、イルマスの復讐を覚えがあろうがなかろうが、本人の意思を尊重して受ける可能性が大だ。
実際に武具の一つを今装備している目の前の光景から考えるにもう確定と言ってもいいだろう。
相当高齢な魔族と言っても前歴が前歴だ。
イルマスが返り打ちになる可能性が高い。
それで厳格な決闘の形式にのとって絶命させられたら元も子も無い。
かなりひどい危険にさらされることになるが、今できる最善手を打つ必要がある。
「お前らバカはやめろ! 先に攻撃した方に矢を打つ! 矛を収められないのならまず俺が相手になろう」




