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三層㉞ 名




「お主には世迷言に聞こえるかもしれんが、わしはあの女を殺しておらん。発見した時にはすでに息絶えておった」


「あなたの言う通りそれは世迷言です。鮮血のついた剣を持っていたのにそんなことがどうして言えるんですか。……これ以上はそのことには話さなくて結構です」


禍々しいオーラは奴の内面を現すかの様に周りで荒れ狂い始めた。

表情は鉄の仮面のように落ち着いているが、瞳がギラギラと獲物を狙う猟犬のような目になっていた。

完全に何かのスイッチが本人の中で入ったようだ。


イルマスに向けて矢を構える。


平静を失っている事に気付いたのか、息を落ち着けると刃を両手に構えた。


「最後に一つだけ教えてもらいたい。旦那様とご息女を殺したあの男の名前を」


「あの者の名前はない」


イルマスが刃をリッチャンに飛ばす素振りを見せた。

俺はそれを確認すると矢を放った。


するとなぜか身を隠していた岩が砕け、地面に真っ二つに割られた矢が落ちた。


「そこにいるのは分かってます。邪魔をしないで頂きたい」


イルマスはひどく冷め着いた目を向けてきた。


「ユースケスさん、一旦撤退しませんか」


「撤退したらもっと状況が悪くなるから無理だよ」


刃を補充するとまたリッチャンをイルマスは睨み始めた。


「次、ふざけた返答をするようであれば、アナタの首を落とします。あのお二方のようにあなたには脅しはしません」


「あの子の名は喰われている」


イルマスのオーラが膨れ上がると刃が放たれた。

だがリッチャンの首の直前で跳ねて、地面に落ちた。


イルマスはそれを見ると奴から距離を取った。


「あの子の名は呪具に食われた。本人を含めて誰も覚えておらん。だからあの子には大戦のときに人間たちから畏怖されて呼ばれた通り名しかない。あの子はお伽話の悪魔になぞらえてこう呼ばれた。《破壊》のノルアクアと」


リッチャンが長髪を撫ぜると半ばから消えて、代わりにいくつもの封印された武具が現れた。

その中の一つであるガントレットだけが宙に浮かぶと、その他の封印された武具は地面に落ちた。


「そして、こいつに名を喰わせたわしもお伽話の悪魔になぞらえて《万象》のリードと呼ばれた……」



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