三層㉛ 見当
「体に負傷があるのか、呪い持ちかどちらかの可能性が高そうだな」
「嫌な予感しかしませんね……」
俺が血痕に関して意見を言うとアイリッシュは死んだ目で返事をしてきた。
どうやら奴の危険センサーに反応があったようだ。
「とりあえず上に行く必要があるな。大ジャンプ的な何かで俺をあの上まで連れててくれるか」
「あの二人からなにがしかの事情を聞く前に戦闘に入るような気がするんですが。上がる意味がありますか」
「止めに入ることくらいはできるだろ」
「そんなことをすれば死にますよ」
俺の言葉にいつもとは違い、断定するような物言いでアイリッシュは返してきた。
アイリッシュは今回のことは心底無謀なことをやっていると思っているようだ。
「確かに俺一人ならそうだが、お前が居るんだからそうなることはないだろう」
「どうして私をそんなに信頼してるんですか」
「お前の心は人の痛みが分かる人間のもんだからな。自分に期待する他人を裏切れない。裏切ったらその人が受けたダメージが二倍で帰って来るからな」
「……」
アイリッシュの説得はうまく言ったのかは謎だが、奴は腰を屈めて俺を担ぐ姿勢を取った。
「見当違いだったか?」
「当たってもいるし、外れてもいます」




