三層㉙ 尾行
「そうか、じゃあひとまずお前に任せる」
「いろいろ練っとったところを悪いの」
「気にするな。お前の残す結果いかんで必要になる可能性もあるから」
「せいぜい失敗せんように頑張るよ」
リッチャンは特段気負った様子でもなく、そういうと教会の裏口からまた外に出ていた。
口では任せると言っても少し怪しすぎるきらいのあるリッチャンを放っておくわけにもいかない。
尾行して、探りを入れる必要があるな。
1人で行くのが一番バレにくいが、難所を越える足の確保とアイリッシュのビビりバレの危険性を考慮するとアイリッシュも同伴させた方がいいだろう。
「なにい、アイリッシュ! 説得の失敗を案じてリっちゃんの後についていくだとお! 俺も同伴させてくれ!」
俺はアイリッシュのサイドに移動すると馬鹿でかい声でそういった。
「酔いが回ってても物怖じしねえ! 流石慢心のアイリッシュ!」「目から完全に光が消えていますわ! アイリッシュさん、完全に殺る気スイッチが入っていますわね!」
こいつらにはアイリッシュが全く別の見え方をしているらしい。
俺には奴が絶望に飲まれているようにしか見えない。
「お前らはここで待っていてくれ。あまり大人数で行くとバレるからな」
「おう、任せとけ! もしもの為に武具を出来るだけ作っておく!」




