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三層⑱ 部屋
何事なのか気になるが、現在も全力でダッシュしているだろう奴らに追いつくのは至難の業だ。
今から追い駆けていても見つけることが出来ないか、見つけてもすぐに見失うかのどちらかだろう。
「どうします?」
「あいつに任せとけばいいだろう。さすがに朝方までには帰って来るだろうし」
アイリッシュが若干引きつった顔で尋ねてきたのでそう答える。
自分の部屋番くらいは確認しているだろうし大丈夫だろう。
「俺はもう休むよ」
「ではわしらもそうするかの」
俺がそう切り出すとリっちゃんが他の奴らを促すようにそう言った。
三々五々で散っていくと部屋の中に入っていく。
部屋の中には一人用のベッドと机があり、必要があるのかは謎だがソファもあった。
「はあ、とんでもない道のりだった……。もうだめ、お酒」
荷物を置くために壁に近づくとくぐもったアイリッシュの声が聞こえた。
この宿壁薄くないかコレ。
試しに反対側の壁を叩いて呼び掛けてみる。
「聞えるか?」ゴン!ゴン!
「おう! ばっちり聞えるぞ!」
するとグラシオが快活な声で答えてきた。




