三層⑯ 割引
中に入るとカウンターの店主がこちらに目配せをしてきた。
異様に目の細い、人の好さそうな男だ。
「宿をとりたいんですが」
「一人1万DPになります」
俺がそう切り出すと亭主は簡潔に宿の値段について教えてきた。
現在一人5万DP所持しているので払えない金額ではないが、全財産の5分の1をおいそれと払うのは抵抗がある金額だ。
とりあえず一回保留して、他の宿の金額も見てから決めた方がいいかもしれない。
「1万ですか……。 すいません、手持ちに余裕がないので他の宿も見てから決めさせてもらいたいと思います」
「左様ですか。半額なのでここより安いところは無いように思いますが気になるというのならしょうがないですな」
「相場を知らないもので申し訳ない」
「いえいえ、またお越しになるのをお待ちしております」
なんだか捉えどころのない亭主だなと思いながらそこを後にすると隣の宿屋に入っていく。
「あんた、そこ中々ランク高いわよ」
「お前はさっきから何で入る前から分かるんだよ」
「当たり前でしょ。宿屋を使うのは冒険者のセオリーよ。あたしくらいの外観見れば一発で分かるのよ」
外観見れば分かるって殆ど見た目なんて一緒だろ。
「すいません、ここの宿は一泊どのくらいで?」
「ここは一人5000DPです」
あの亭主ぼってたな。




