三層⑨ ナイーブ
「敬語? お前にはそう聞えたか。だがこれは違うぞ」
「いや、敬語でしょ」
「黙れ。これは罵倒の先にある高度スキル嫌味だ。アイリッシュは慇懃無礼な態度を取りつつ罵倒をしてるんだよ」
「ええ……」
「疑り深いみたいな顔してるな。アイリッシュ、一発スゴイのお見舞いしてやれ」
俺はそう言いながらアイリッシュに法を向く。
すると奴は首を振って「ムリムリムリ」と意思表示してきた。
「大丈夫だ。何も考えずに言葉を言えばいい」
俺は小声で奴にアドバイスを送る。
「イルマスさん、今日も動き凄いですね」
するとアイリッシュは思考停止したのか、悟ったような表情で言葉を紡いだ。
「イルマスお前はナメクジ以下のノロマ野郎ということらしい」
「いやそうはならんでしょう」
「待って。イルマスあたしはいつもこれくらいの嫌味は言っているわ。十分あり得るわ」
「ミカエルさん性格悪」
ボゴォ!
ミカエルのカミングアウトにイルマスが反応すると、右ストレートが飛んでき奴の意識は刈り取られた。
「ふぅ。ナイーブな話題だから。この話はこれまでにしときましょう。続ければまた犠牲者が出るかもしれないわ」




