魔界55 一閃
現実に戻るとまずアイリッシュに情報を共有して,ノルアクアに向けて隙を作るための態勢を整える。
あとは隙を作った後の考えずに、ただそれだけに尽くすだけだ。
「若干空気が変わったか」
ノルアクアはこちらの変化を直感で感じ取ったようでそんなことを呟くと踏み込んできた。
「だからといって、何が変わるということもないが」
最上段からの呪具の振り下ろしと呪いで構成された刃が左から横なぎに放たれる。
ーー上から呪具、左から呪いの刃がくる。打ち込む振りをして俺の方まで真っ直ぐ下がって,それからそこで矢筒から鉄製の菱形の鏃のついた矢を取れ
心の中のアイリッシュは突然の方針変更に、若干驚いた顔をしたが、うなづいた。
アイリッシュは十字斬りを受け止める形で光刃を振ると、途中で手を離し奴に向けて投げ、そこから後退する。
ノルアクアはそれに対処する必要に迫られ、一拍
追いかけるのが遅れる。
物理的な距離を補うだろうために打ち出された呪いの刃をアイリッシュは俺の視覚情報をもとに対処し、後方にバックする。
矢筒の位置まできて合図をすると奴は手探りで一回矢に触れると菱形の矢をうまく引き抜いた。
それと同時にノルアクアが突きを放ってこちらに急接近する。
ーー心中に向けて突きを放ってる。矢で呪具を受け止めて、踏み込んで奴を斬りつけろ
矢と呪具がぶつかると破壊された鏃から冷気が飛び出して呪具と奴の右半身を凍りつかせ、さらにアイリッシュが繰り出した斬撃で奴の義手が切断された。
呪いで腕を補いつつ,刃を展開する。
呪具と左腕を封じた今、やつが動かせるのは呪いだけだ。
その呪いをアイリッシュに向けている今やつが動かせるものはない。
誤魔化し用のない隙ができた。
それを見逃さずに倒れていたイルマスが黒炎をたなびかせて双剣の呪具でノルアクアを一閃する。




