魔界39 トラック
景色が赤い呪いから、飾り硝子が無造作に幾枚も並べられた黒い空間に変わった。
「偉く薄暗い空間だな」
床に腰をついた状態から起き上がる。
この世界では身体は現実とは違い問題なく動くようだ。
やはり動く状態の方が開放感があっていい、動けない状態は介護する奴がいればいいが、いなければ生活に支障が出るレベルで不便だ。
「それをなんとかする方法も余裕があったら考えたいが……」
やはりまずは迫るノルアクアの脅威に対処するために、アイリッシュを奮起させねばならない。
「このステンドグラスに何か意味があるのか?」
白い少女と見慣れぬ鉄塊が映ったそれに触れる。
するとステンドグラスが拡大して、また周りの景色が変わった。
「今度はなんだ?」
慣れぬことの連続に少し困惑しつつも、状況を確認するために周りに目を向ける。
すると生垣の向こうからアイリッシュを幼くしたような幼女が飛び出し、上空に転移陣が浮かんだ。
「パチャア! ここが年貢の納めどきだ、この異世界トラックレースおれん勝利だい!」
「八本星の壬二龍! 勝負はまだわからんぞ!」
転移陣の向こうから謎の排気音をかき鳴らす鉄塊二つ現れ、幼女の方に減速せずに突撃していく。
静止する間もなく幼女が鉄塊に弾かれた。




