魔界35 蔵呪
心臓の穴から垂れたドロリとした赤い血を見ると、蠢くのが見えた。
血が蠢いた跡を見ると,血痕が残っていない。
あれは血ではない。
そう確信すると同時に空気の揺れる音が聞こえた。
反射で弓を盾にして後ろに飛ぶ。
バキと嫌な音が手元で聞こえると、赤い槍が弓を折っていた。
折られた弓は赤色に変色し、黒炎を上げた。俺は弓を放棄した。
呪いの末期症状と同じ現象だ。
おそらくこの赤い槍は誘因する効果を持っているんだろう。
よくよく赤い槍を見ると濃密な赤いオーラであることがわかった。
奴の負傷箇所から溢れて出てきたのは血ではなく、濃密な呪いだ。
俺は今戦える状態でも、あの呪いを抑える術を知っているわけでもないのでパーティーメンバーが固まっている場所にバックする。
「心臓を貫いたら呪いが出てきた、奴は人間じゃないのかもしれん」
「見てましたよ。あの変幻自在の呪いは厄介ですね」
「というか,アイリッシュさんが…」
俺の言にイルマスが肯定の言葉を返すと、ファイルがそう切り出す。
見るとアイリッシュが青い顔をして、ノルアクアの斬撃に対応している。
心臓を打って終わりと思っていたので、打つ直前に奴のバフを解除したのを忘れていた。
びびった状態でよく耐えている。
奴のポテンシャルは俺が思ったよりも高いかもしれない。
「まずいですね、僕が出ましょう」
俺の評価改めとは逆に危惧したイルマスが、新調された双剣を持って前にでる。
あれは確かタックスが所持していたノイマンの双剣だ。




