魔界26 気炎
グラシオの手には前面に大きく神聖術の術式が書かれた黒い盾があった。
俺たちが攻略した層で最高硬度を誇る全身金剛鉄のボスブラッドオニキスの素材で作ったものだろう。
熱や冷気を通しやすいという難点があるものの、物理攻撃しかしてこない聖獣相手のこの局面では極めて有効だ。
「きたわね! 下がっていいわよ!」
その金剛鉄の盾を受け取ったミカエルは意気揚々と俺に対してそう促してきた。
どうやら盾が良ければ、奴の攻撃を完全に止められる自信があるらしい。
聖獣の攻撃が俺に向かってもしょうがないので、パーティーメンバーの塊の中に戻る。
「グラシオ、追加で呪いの剣も作れるか」
「おう、任せろ!」
「それはどういう……」
皆と合流するついでに、アッタカーであるアイリッシュの武器を新調するようにグラシオに頼み、
それからミカエルを身守ることにする。
できればアシストの形で何かしたくはあるがテレパスは二度も聞くような類のものではないし、俺にできることはない。
強いて言えばやつが攻撃を受け切ってできた隙に全力で攻撃をすることくらいか。
「二度も受けねば分からんようだな」
「イキってんじゃないわよ! さっきのは全部武器のせいなんだから!」
対峙した両者はお互いに気炎を吐くとそれぞれ構えを取った。




