二層㉕ 奈落の底のバーバリアン
しまったな。
アイリッシュが降りてから降りるべきだった。
穴の中が暗すぎて何も見えない。
仕方ないので荒い息の音が聞こえる方向に受けて番えた矢を飛ばす。
威嚇くらいにはなったと思うが、行動阻害や戦闘不能にはまでは言っていないだろう。
「イルマス。俺が着地したら背後に来てくれ」
「わかりました。背後に回ったら肩を叩いて合図しますね」
俺がイルマスにそう呼びかけて着地して、少しすると肩を叩かれた。
随分と早い。
おそらく着地してからあまり移動してなかったのだろう。
「ユースケスさん、左から一体近づいてます」
奴がそう言ったので耳を澄ますと、息遣いの音が聞こえてきた。
知らぬ間に気を抜いて、集中が途切れていたらしい。
一人だったらとここでお陀仏だ。
ぞっとしない。
音のする方向に矢を飛ばす。
すると息遣いの音がとまった。
クリーンヒットしたか、学習して息の音を殺し始めたのかどっちだろうか。
息の音がする方に向けて矢を飛ばしながら考える。
するとアイリッシュたちが降りてきたのか、周りが明るくなってきた。
周りの状況を確認すると矢に胸を射られて即死したバーバリアンと首や頭を割られたバーバリアンの亡骸が幾体も転がっていた。
どうやら俺の手は見ずに弓を射ると勝手に心臓を狙う傾向があるらしい。
過去の努力のたまものってやつだろう。
敵がバーバリアンで助かったな。
知能高い奴なら弾道を予測して全部弾かれてた。
「アイリッシュ、光飛ばして奥まで確認できるか。狙撃手がいるか確認したい」
「フン」
(わかりました)
光弾が俺の脇を通り抜けて奥に向けて飛んでいくと、近接武器を持ったバーバリアンの大群と一回りデカい白いバーバリアンがいることが見えた。
あの白くてデカいのが群れの主てところか。
「ココがボスの間で確定だな」




