魔界11 逃走
「ロリコォォォン!(では行かせてもらおうか!)」
聖獣は力を充填し終えたのか、そういうとこちらに向けて前足を踏み出した。
カラン、コロン!
それと同時に金属音が鳴り、そちらに目だけ向けると、イルマスが呪具の封を解いてばらまいていた。
「ダメ押しです」
「ロ……なにぃ!」
邪気に当てられた聖獣は走ってる途中に、馬から人の形態になり、大きく態勢を崩した。
躓いて、殺人的なスピードで顔面から光の盾に突っ込んでいく。
アイリッシュが作った盾を顔面で打ち壊していき、ついにミカエルの盾にぶつかると顔面から流血し、完全に静止した。
「盾が鼻血でべっとりじゃない。もう嫌になるわね」
ミカエルは盾に張り付いた聖獣を引きはがすと、そう言って盾を聖水で洗浄し始めた。
「せ、聖獣様でだめだというのか。もう私がやるしかあるまい!」
近くで男の声がしたと思うと、先ほどまで気絶していたはずのトルーザが、壁に飾られていた剣を手に取るのが見えた。
俺が奴の足に矢の照準を取ろうとするとその前にグラシオの手が伸びた。
「やめろとるな!」
「へえ、すごい業物だな! 呪いを帯びている!」
グラシオが奴の手から奪った剣を見て感嘆の声を上げる一方で、トルーザは青い顔になっていく。
聖獣で警戒したが、負傷なしにことが進められ、思ったよりうまくいった。
そう思いながら、イビルゲートのことについて奴に質問しようとするとそこには誰もいなかった。
「今日はここまでにしといてやろう」
外からそんな声が聞こえると思うと、聖獣が馬車を手で引いて爆走している様が見えた。




