魔界2 不屈
不屈の勇者と分かった瞬間に、エリアの様子に変化が生じた。
特に興味無さそうに沼を眺めていたのが、不屈の勇者をガン見し始めたのだ。
まるで街中で意中のアイドルを発見してしまったガチ恋勢みたいだ。
嫌な予感がする。
「ストリン! ここよ、あたしよ、あたし!」
「うるさいわよ!」
エリアが大声を張り上げると、間髪入れずにミカエルのグーパンが飛んだ。
メキャアという嫌な音がエリアの頭から上がったが、エリアは気にせずに不屈の勇者をガン見し続ける。
どうやら奴に対して並々ならぬ思いがあるらしい。
「エリアか、久しぶりだな」
その矛先である奴は淡々とした感じでエリアに返事を返す。
どうやら奴はそこまでエリアに対して思い入れもないようだ。
「久しぶりじゃないわよ、変態。何でこんなところでアタシらの前に立ちふさがってるのよ」
「それはこういうわけだ」
そういうと不屈の勇者は瓶を取り出した。
何をするのかと思うと、自らの頭に叩きつけた。
透明な液体が奴の頭部にべったりと付着する。
独特な鼻につく匂いからそれが、油だと気づくと奴の体は燃え上がり始めた。
炎で黒衣のフードが解け、白い髪と黄色い瞳が見えた。
突然の自傷行為に絶句していると奴は、大剣をインベントリから召喚してこちらに近づいてくる。
「自分を追い詰め、高めるためだ」
「ユースケスさん、大変です。師匠が鬼畜モードに入りました! 自分の行き過ぎたストイックさに私たちを巻き込むつもりです」
「ふおおおお! 炎が体を溶かす! 極まって来たぞ!」
完全に決まってしまった顔で不屈の勇者が叫ぶ。
……勇者にはロクな奴がいないのか。




