五十層2 武器
リッチャンの子供時代はもっぱら職業を開放することに割り与えられていた。
そのこともあるが、やはりまだ子供の枠内であるリッチャンの行動範囲はせまく情報が手に入りづらかった。
手に入った情報と言えば、リッチャンが幼いころは魔界の土地は痩せていて、食料が手に入りづらいということだけだ。
今から400年以上前の記憶なので、環境もそこそこ変わっているので、あまりここはあてにならないだろう。
もっと情報を手にいれる必要がある。
小休止を終えて、教える母に憧れ、教師として歩み始めたところから再生を始める。
―|―|―
「新しくここを受け持つことになったディアナ・フォスターじゃ。皆の者よろしく頼むき」
リッチャンがそう紹介すると、生徒の一人が手を挙げた。
海のように深い青色の髪をツインテールでまとめた黄色の瞳の少女だ。
眼がキラキラしており別人のようだが、顔の感じや全体的な色合いからしてノルアクアだろう。
「ディアナ先生! 先生が『ウエポンマスター』だって聞いたけど本当ですか?」
「いかにも、わしが当代の『ウエポンマスター』じゃ。武器については触れればその武器がどうしてほしいかわかる。何か懇ろにしている武器があるようなら、わしが見てやろう」
「わあ! すごい! わたしの剣を見てもらえますか」
「分かった。余暇の時間にわしのところに来なさい」
「ありがとうございます!」
いかんな、確かにノルアクアのはずだが、見れば見るほど奴じゃないように見えてくる。
無表情一徹みたいなやつの表情がこうコロコロ変わるとなあ。
「“ ”、見せる必要なんかないよ。俺が見るから」
「ええー、でもノイマン。どうすればいいかわからないじゃん」
「うっ! そ、そんなことない。俺は分かるよ、どうすればいいか」
記憶の中のノルアクアと同い年――人間で言うところの七歳くらいの黒髪の少年が焼き餅を焼いたように膨れっ面で抗議する。
どうやら少年はノルアクアにホの字らしい。
……魔界の攻略に関係ない情報ばかり溜まっていくな。
「ガハハハ! ノイマンも来い。二人まとめて武器を見てやるき」
リッチャンは豪快に笑うと二人ともに来るように促した。
そこからは授業の様子だったので、見てもしょうがないなと早送りして流す。
リッチャンがノルアクアとノイマンと呼ばれた魔族の武器を見るところで止めることにしよう。
ノルアクアの戦闘の基本体系やノイマンと呼ばれた魔族の戦闘のスタイルをそうすれば見ることが出来そうだ。
「おお、持ってきたか!」
「うん! 持って来たよ! はい」
「俺は自分で見れるけど。うん」
リッチャンの元にやってきた少女少年は、それぞれの得物を差し出す。
右手に剣、左手に双剣を受け取ったリッチャンは見る。
「“ ”の剣は魔力を込めると先端の比重が上がるようになっとるな。ノイマンの双剣は魔力を吸い取って、切れ味が上がるようじゃ」
「先端の比重が上がる何かいいことがあるの?」
「下段からの切り上げの時に敵の剣を弾ける成功率が上がる。切り上げる途中に遠心力のブーストも乗るからな」
「僕の魔力を勝手に吸い取って、切れ味を上げてるってこと」
「そうじゃが、物は使いようじゃ。直接触らんように手袋でもすれば、切りつけた相手の魔力のみを使って使うことができるし、力の強いものほど、魔力も多いことが多い。もし強い相手と戦う様なら打ってつけの武器になるじゃろうて」
「手袋かあ」
それを聞いたノイマンは双剣を持ちながら、遠い目をする。
どうやらなにがしかの手袋に頭を巡らしているようだ。
ノルアクアは下段注意、ノイマンは、切れ味に注意と覚えておこう。




