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十層11 ”    ”

『“     ”先生と同じ教師になったんですよ! 褒めてください、えへん!』


 澄んだ金色の瞳が本人の心の動きに呼応するように目の前で踊る。


『先生だけに呪具を使わせるわけにはいきません。私もこの剣に名前を贄として与えます』


 決意の言葉とともに金色の瞳が強い輝きを帯びる。


 そして今自分の前には光を失って淀んだ金色の瞳があった。

 かつて自分を救い、名前を失った生徒――『破壊』のノルアクアが寿命が尽きる間際――死の際になってまた自分の前に現れた。



 ―|―|―




 あっという間にミステルトを亡き者にした甲冑は、リッチャンと向かい合い、その甲冑の間から淀んだ黄色の瞳が見えた。

 暗殺者か何かに多い目だ。

 どういう理屈かは分からないが、人相手の殺しを多くやってる奴はああいう感じになりやすい。


 ……危険な匂いがプンプンする。

 目つきもそうだが奴の言動からは暴走した時のイルマスを彷彿とさせるものがある。

 一応のところ、リッチャンの知り合いのよしみで危害を加えないという可能性もありそうだが。


「先生。そこに居る人間どもは殺していいですか?」


 いやなかったみたいだ。

 こちらに危害を加える気しかなさそうだ。


「確認取られてもの。お主わしがダメだと言っても殺すつもりじゃろ」


「ボスは自分のやりたいことは絶対にやるからね」


「ロリコォォォン!(幼女はいないな……。であれば死んでも仕方ない)」


「無慈悲」「エナ―の為にノルアクア様……♡」


「……」


 肯定の沈黙。

 どうやらもう本人の中では決定してるようだ。

 今さっきの様子を見る限り、馬鹿正直に戦っても勝てる見込みは薄い。

 説得、戦闘がダメとなると我々に残された選択肢はもはや逃亡の一択しか残っていない。


 まずファイルに頼んで爆発か何か目くらましになるようなことを用意してもらって、そこからバラバラに逃亡を図ることにしよう。

 相手の注意がリッチャンに集中しているうちに、ファイルに声を掛けようと思い、奴らの方に体を向けるとイルマスが大剣を構えていた。


 やめろと言う前に、大剣は甲冑に向けて投擲された。

 甲冑は避ける素振りを見せず、それに直撃した。

 鎧が砕け、中に入っていた当人は潰れたかと思ったが、半分に割れた甲冑の内側からは白い肌と青い髪が露出しただけで血は一滴も落ちなかった。


 青い髪が靡くかと思うと、瞳の残光を残して消えた。

 それと同じくしてイルマスも目の前から消えていた。

 見るとイルマスの足のあった地面が円柱状に抉れており、その延長線上に折れたナイフとだらりと左腕を垂らしたイルマスが居た。


「いきなりの挨拶だな、少年」


 奴の目の前に立った青い髪の女は剣を下した。


「まあ待て」


 そこに血と拳が躍り出た。

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