七層50 今王
王にこちらを謀ろうという動きがあるかもしれないという疑惑が浮上したので、俺たちは今王のもとに訪れている。
正門からではなく、窓から王の間に入った形なので王は驚いた表情でこちらを見つめていた。
俺の個人的な見解だが、表情と言い態度と言いこいつが何かを企めるような人種には見えない。
「冠から察するにあんたが王様で間違い無いな? ディゼルの件について聞きたいことがある」
王様は困惑した表情をするとやけに緊張した硬い声音で答えた。
「…ディゼルだと? そのようなものはワシは知らん。 お主たちは誰じゃ」
心の声とズレはない。
奴は言葉通りディゼル自身との面識がないようだ。
ディゼルの言っていたことを信じれば、奴の言っていた王様がこいつではない可能性が高い。
「ここに訪れただけの冒険者だ。 いきなり来て悪かったな。最後にひとつだけ聞いたら帰るから許してくれ」
「…なんじゃ?」
「あんた以外にここで王と言われる奴は誰がいる?」
「ワシ以外に王と言われるものか。そんなものはワシの父である先王くらいじゃが」
先王か。
今現在も退役したそいつを王と呼ぶかは微妙だが、退いたことを知らなければそう呼ぶことは想像に難くない。
「その先王は今どこにいる?」




