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七層9 渇望
「ここらの呪いを取り除いてくれ…ませんか」
いつもの調子でそう言いかけて、敬語風に言い繕うと奴はボサボサの頭を掻いた。
「わかった」
ローンはあっけなくこちらの要求を飲み、周りにある呪いを壺の中に納め始めた。
心配になるくらい聞き分けがいい。
王様から化けものと恐れられてるので、人の言葉が通じないとまで考えていたが実際は違うらしい。
こちらとしては話が早くて助かるが、こいつが何某かの形でここに呪いをばら撒くのに関係してるだろうことを考えると解せない。
「どうしても呪いをばら巻きたかったんじゃないのか」
「呪具を作成するために少し俺の周りで暴れさせているだけでそんなことをした覚えはない」
ローンはいきなり何を言ってるんだこいつはみたいな目で俺を見るとそう答えた。
その様子を見て、俺はこいつは感じが悪いだけで白ではないかと気がしてきた。
この男の様子からして他人を害してまで欲望を満たしたいという渇望ようなものが感じられない。




