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二層⑬ ウルトラバンジー




 老人たちはグラシオの作ったナイフを叩いたり、振ったりして順番に見ていく。

 最後の何か一番偉そうな老人が見るといよいよ点数好評の時間となった。


「ふむ、主の業物。大変よく出来ておる。硬さも良く、振りやすく、型もかさばらない形状じゃ。至高の一品と言えよう。お主には95点を与える。前回優勝者と同じ点数じゃ、喜ぶがよい」


「マンダルフォン、わしはこれを95点だとは認めん」


「メンドゥー様一体それはどういう事でしょうか?!」


 何か知らんが一番偉そうな老人がいちゃもんをつけてきたようで、査定を下した一番柔和そうな老人が慌てている。


「これを見よ」


 メンドゥーと呼ばれた老人はおもむろにグラシオのナイフを目の前で三つに分けた。


「一つでありながら、三つのナイフ――」


 柔和な老人が驚いた顔で言うと、偉そうな老人は三つのナイフを合わせて一つのナイフに戻す。


「これは95点ではない。100点のナイフだ」


 グラシオはその言葉に目を見開いた。

 それから拳をかみしめるようにぐっと握ると老人に問いかけた。


「何も説明もしてないのに爺さん、よくわかったな!」


「当たり前よ。ワシは現役で鍛冶をやっとるからな。ここに来る前は地上の人間をブイブイ言わせとった者よ」


「爺さん、外から無限迷宮の中に来て今住んでるのか?」


「うむ、ここに永住権を得て住んでおる。当初の予定では魔界に行って【カースドシリーズ】を作成する予定じゃったがな」


「鍛冶師の夢だからな。俺も【カースドシリーズ】を作成したいと思ってるんだ、爺さんも来ないか」


「わしはもう年老いた。とてもではないが、三日三晩取り付かれたように槌を振るわねばならん業物を完成させる体力も、無限迷宮を越える活力もありわせん」


「そうか……」


「ここで売っらんで、お前は次の壁に超えるがいいグラシオ。このフロアミッションは完了じゃ」


 グラシオは名残り惜しそうに爺さんを見つめるが、爺さんは答えず、奴にナイフを返した。

 何かを決意したようにそれをグラシオは受け取ると踵を返した。


「そうだな。じゃあ爺さんの分まで素材を持ってきてやるよ。無限迷宮は無理だとしてもまだ鍛冶師として爺さんはやれるからな」


「お主……」


 爺さんのぼそりとそう呟く中、グラシオは会場の中を堂々と立ち去っていく。


「グラシオさん、頭の湧いた武器キチガイかと思ってましたが見直しましたよ。じゃあそのナイフを僕に……」


「ダメだ! 1000DPとコイツは釣り合わない! このナイフに2000DPの価値がある! 追加で1000DPでお前に渡す!」


「えええ……」


 こいつガメツっ!




 ―|―|―




「ではエントリー№78番、アイリッシュさんのウルトラバンジーの出番が回っていきました! アイリッシュさんの意気ごみのほどを!」


「よ、余裕のよっちゃん……」


「口調が大丈夫なさそうだけど、表情は微動だにしていない! 新手のマイクパフォーマンスだ! さすがは全人未踏の最高高度から挑む参加者!」


 ヒェ、グラシオが早く終わったからまだ大丈夫とか思ってたら、もう出番来てる……。


 ヤバいぞ、これは。


「ではアイリッシュさん、どうぞ!」




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