二層⑫ タイムリミット
カキン、カキン!
金床を叩く音が淡々と響く中、俺は度胸フェスの参加者の列に並んでいるアイリッシュを見ていた。
「フン、周りのものなど塵芥よ」
(…………)
奴は何もない虚空を見つめてそう呟く。
言葉とは裏腹に青い瞳には光がなく、焦点が合っていない。
そしてダメ押しのように心が沈黙していた。
アイリッシュの心はもうすでにあの世に逝ってるようだ。
おそらく度胸試しの時にカムバックしてきて、奴の魂ごとあの世に連れていくことになるだろうことは想像に難くない。
どうにかしなけれりゃならんな。
主催者のケツでも矢で狙撃するか。
でもなそんなことすれば確実にパーティーメンバーの奴らにバレるしな。
グラシオがそれまでにナイフを完成させて審査員に見せれればいいんだが。
鍛冶でそんな早く出来るものなんて見たことないからな。
カキン、カキン!
「出来た!」
早!
もう出来たのかよ、開始三分くらいしか立ってないぞ。
「おお、エントリー№55番もう出来たようだ! GP注入に五分以上かけるところを金床で三分、驚異的だ!」
グラシオは出来たそれを白髪の老人たちの前に提示する。




