206/375
六層39 成就
見れば見るほど奴が前の層で見た吸血鬼に似ているように見える。
「お前は一体そんな姿をとって何をする気だ」
「ヴァンプの願いを叶えるだけです。彼の祈りは規定値に達してましたから」
奴が返事を返したことに少しぎょっとする。
基本的に喋れないし、意志の存在しない物だと思ってたのに喋れるのか。
さっき狂乱していたのが不安要素だが、今のところ奴の様子からは理性のようなものを感じないこともない。
話し合いでなんとかなったりしないだろうか。
「じゃああのシスターのところには戻らないのか?」
「戻らない。戻ったらヴァンプの願いを叶えることができなくなるからな」
「あいつの願いは弟の居場所を知りたいってだけだろ。それでなんでお前がフラットになる必要があるんだ」
「フラットがもうこの世のどこにもいないからだ。だが俺がフラットになれば、弟の居場所が確保されることになる」
めちゃくちゃだな。
願いを叶えるのに必要なものが存在しなければ、自分が成り変わればいいなど狂気の沙汰だ。




