六層30 容疑者
星が消えたことがわかって、シスターから話を聞くと、ベッドルームに大十字架を置いたのは奴でないことがわかった。
じゃあ誰が置いたというんだろうか?
とりあえずのところわかっていることはそこから何かがおかしかったということだけで、何某かの影を辿ることはできない。
「あんな得体の知れないものが、持ち出されたと思うと怖気が走るな」
「もう得体の知れないもので溢れかえってるから大差ないわよ」
それもそうか。
「われわれが起床時に初めて確かにあったわけですから星を持ち出されたとするとその後と言うことになりますね」
俺がエリアの言葉に妙に納得しているとファイルがそう切り出した。
「ずっと行動を共にしてる僕たちには無理なので除外すると外部の人間でしょうか」
「外部の人間か…。見てきた住人は全員盗みそうな感じだから狙いが絞れんな」
クマの襲撃もあるし、できれば狙いを出来るだけ絞ってやっていきたいが。
「シスターは星を持っていくとしたら誰が持っていたか心当たりはないか?」
「そうですね。強いて言うならばヴァンプさん」
「そのヴァンプさんはどこに住んでる人間なんだ?」
「森の近くの小さな集落に住まわれている方です。白い髪が特徴的な」
白い髪でピンときた。
あの吸血鬼に瓜二つの男のことだろう。
第一容疑者は奴か。