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六層29 失星
職業病を得ることは断念したが、フロアミッションで星を追えと提示されているので,あの大十字架だけは見してもらうことにした。
「こちらです」
ベッドルームにシスターは案内するかと思うと、こちらの予想に反して、壮大に壮大を重ねたような豪奢なステンドグラスがある礼拝堂に案内した。
見るとその中央に大十字架は貼り付けにしてあるのが見える。
いったいいつこいつはそこに移動したというのか。
「結構いいところに飾り立てられてるんだな」
「あれはもともとあそこにあったものですから」
いつもは常備してるものを飾り立てているということではなくて、あそこに備え付けてあるのを持ち出しているというかんじらしい。
「……どうして?」
シスターは徐に大十字架のところに近づいてくるとボソリとそう呟いた。
もともと青白い顔からさらに血の気がひいて真っ青になっている。
「なにかあったのか?」
「大十字架に取り憑いていた星が消えました」
星が消えた。
それを聞くと俺の脳裏に張り付いていたフロアミッションの文言が頭の中で再生された。
『星を追え』