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六層18 天地
「先ほどここに黒い獣たちが押し寄せてたと思うんですが、どこに行ったかご存知ありませんか?」
シスターは挨拶を済ませるとあのクマたちのことについて尋ねてきた。
特段隠したところで徳をすることもないし。
吸血鬼に似た男が言った「教会が黒い獣を狩ってまわっている」という言葉の真偽を確認するのにもちょうどいいことだし。
素直に答えることにする。
「あいつらなら、あっちの山のほうに向かったよ」
「そうですか、では落とします」
「落とす?」
何言ってんだこいつは。
遠距離武器も持っていない上に、あっちは複数体いるっていうのに。
落とすも何も攻撃することもできないだろ。
「どうやってその装備で落とすっていうんだ? ハイジャンプか、そのバカでかい十字架をブーメランにでもする気か?」
「天と地をひっくり返します……」
そうトーンの低い声で言うとシスターは十字架を地面に突き立てた。
次の瞬間、十字架から鎌を持った真っ白い人型が出たと思うと体が浮遊感に襲われた。