六層16 金銀
なぜ心臓を貫通しても効かない?
先ほど矢が穿っただろうクマの胸を視線でなぞりつつ後方に下がる。
魔法を使った残滓のようなものは感じられないのになぜ?
「……そいつ呪いの塊みたいなものだから気をつけた方がいいわよ」
「俺は教会の人間じゃないんだから気を付けてもしょうがないだろ、呪いのプロのお前が出張れよ」
効果はないとわかっている矢で牽制しつつ、エリアのところまでクマを誘導する。
「近づけるのはやめてよ。あたし戦闘は専門外なんだから」
お前どうやって三層まで1人で行ったんだよ。
内心で突っ込みつつもクマが突撃してきたので、エリアの襟を引っ張って避ける。
「呪いに効くエンチャットとか出来ないのか?」
「銀か金系統のものが有ればできるわよ」
質問するとエリアは自分が首にかけていた銀の十字架に手を添えて、白い手と鎌を生やした。
金、銀の矢なんて、値が張るだけのもん装備してるわけがない。
「その十字架矢に括り付けるか」
「え? それ非売品なのよ」
「なら拾えばセーフだろ」
エリアの手から十字架を取ると矢に巻きつけて、クマに向けて放つ。
矢で心臓を抉られたクマは黒い煙となって空に帰っていった。