六層13 夜空
我々が吸血鬼に似た青年の元を訪ねに行くと、奴が未だに鍋をぐつぐつ回している様子が目に入った。
本当に星が大好きだな、こいつら。
「教会の件で礼を言いに来た。つまらんものだが受け取ってくれ」
グラシオが手慰みに作った十徳ナイフをやつに渡す。
「…」
ジャキンとナイフを広げて、中身を確認すると奴は無言でポケットに放り込む
ひとまずのところ及第点らしい。
「感謝のついでに聞きたいことがあるんだが、『空を落とせ』、『星を追え』、『呪いを刻め』と言う言葉で何か知ってることはあるか?」
きっかけは作ったんで早速本題に切り込む。
フロアミッションをまんま聞いてるので少し露骨すぎるが、特に箝口令を敷かれているわけじゃないし問題はないだろ。
「いきなりよくわからんことを聞くな。何か教会の奴らに吹き込まれたのか?」
「別にそう言うわけじゃない。上の層に行くためにその三つのことを果たす必要があるだけだ。お前の言い草からして教会を信用してないみたいだが何かあるのか?」
「あいつらは星を呼び出して願いを叶えている常連だからな。何かしら子ずるい手を使ってるんじゃないかって周りの奴らには騒がれてるんだよ」
言い掛かり臭いな。
まああれだけ成金趣味な礼拝堂だと思っても無理はないところもあるが。
「兄貴が初めて願いを叶えて以降はあいつらが願いを叶え続けてるから俺も何かしらあると踏んでる。あいつらが駆除してるあの不気味な獣どもと関係がありそうな感じだが」
「不気味な獣?」
「たまに夜空に紛れて飛んでる黒い獣たちだ。星が来てる時は近づいてこないがそれ以外の時はこっちに近づいてきてちょっかいをかけてくる」
確かに別にそう危機性のない獣にしては扱いが過剰だな。