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六層3 体温
奴の分体かと思い思わず凝視するが、体の温もりからそれを否定する。
アンデッドならば体温が冷え切っている筈なので奴の分体ならば今頃触れている箇所から冷えた感触が伝ってくるはずだ。
目の前の男が生者であることは間違いない。
「今から起こすからファイル,お前はいつでも攻撃できるように構えててくれ」
だがそれがこいつが安全である証拠にはならない。
ファイルが呪文を詠唱して火球を宙に生み出すと、奴の頬を軽く叩く。
すると吸血鬼によく似た男は「ううん…」と寝起きのようなひどく覇気のない呻きをあげる。
それから半眼で俺を凝視するとやつは覚醒した。
「何事だ!?」
俺が聞きてえよ。