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六層1 田舎
移層すると真っ暗闇の中に出た。
朝焼けの光を浴びたと思ったらすぐにこれだ。
次の層でもこれが続いたら確実に昼夜逆転しかねない。
この層の地面に字を書いて、苦情を訴えてやろうか。
「他のところよりも空気が柔らかいですね」
ファイルのそんな声が聞こえたので周りを見回してみると、夜の帳の中に柔らかい灯が点々とある様が見えた。
確かに牧歌的な田舎の夜の風景に見えないこともない。
これまでのどこか窮屈なイメージのあった迷宮都市の中の様子と比べるとゆったりしている。
「歳食ったらくると良さそうなところだな。家があるってことはここが迷宮都市でいいのか?」
「まあそれぽいけど周りに壁が見えないし、まだ外て可能性も十分あるわよ」
壁ね。
先ほどと同じようにぐるりと見回すがそんなものは存在しない。
だがモンスターも出てくるような雰囲気もないのではっきりと外とは言い切れない。
現在地がはっきりしないので、まず民家の人間に聞き込みでもするかと思うと、目星をつけた民家で眩い閃光が炸裂した。