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五層21 細工
奴が結界に封じ込まれたのを確認すると動きぱなしの足を休める。
呆気なく捕まえれたのが少し心配だがとりあえずことここに至った以上太陽が出るまで様子を見るしか選択肢はない。
「太陽が登って全部終わってくれればいいが」
結界を見ながらそんなことを口にしてみたがそこまで行くとは期待していない。
あっても多少弱体化する程度だろう。
前情報としてアイリッシュが違和感があると言っていたことからここの太陽が普通の物と異なり特別である可能性も十分あり得るし。
太陽の効果についてまちまちと考えているといよいよ空が白み、日の光がこちらに降り注ぎ始めた。
暖色の光が結界のなかの靄を照らし始めるが何の変化も現れない。
やはり何かあの太陽には細工がされていたようだ。
馬鹿げた仕掛けを用意するものだ。
「もう限界」
俺がそんな感慨を抱いているとエリアの呻きが聞こえてくると同時に靄が空に飛んだ。
「明日の満月の夜に必ずこちら側に引き込みます」
靄は犯行予告を残すと朝日の中に消えていった。