五層19 路地裏
夜になって、先日と同様に路地裏でアイリッシュと俺がともだって移動している状況を作り出す。
するとやはり奴――黒い靄は現れた。
「夜になるとなんでそんな姿が変わるのか不思議でたまらんな。吸血鬼は皆そうなのか?」
昼間、聞き込みや文献調査で奴が何者なのかある程度の推測はついたので、かまをかけてみたがこちらと話す気がないようで、無言のままこちらに奴は歩み寄ってくる。
不用意にこちらにヒントを与えないように気を付けているのか、ただしゃべるのか億劫なのかは分からないが、話し合いで穏便で済ますことは望めそうもない。
そうなると残った選択肢は太陽の力とアイリッシュの戦技で打倒することしか存在しない。
俺がそう決を下すと吸血鬼が戦闘の姿勢に入ったのか、宙に浮き始めた。
矢を番えると同時に黒い靄を鞭のようにしならせて奴はこちらに殺到させる。
バッグして回避しながら、矢を放つがやはり黒い靄に阻まれる。
「厄介だな」
牽制としてもう二つくらい鞭をよけながら、矢を飛ばすと靄が濃い場所と薄い場所があることに気付いた。
こちらの矢を防御する場所の付近は濃いが、それ以外は薄い。
もう一度矢を放ち、奴が命中箇所だけを濃くすることを確認すると、薄くなった場所に『パワーショットLV1』をお見舞いする。
すると靄が弾けて、矢が奴の体を貫いた。