二層⑥ マップ使用不可
「確かに地図には森についての記述なんて一つもないな。と言うか備考の一本道からして色々と違う」
見渡す限り、生い茂る木々。
整備された一本道などどこにもない。
「フン! だから言っているだろう、地図は見るべきではない」
(マップが変わっているときは何かしら攻略側に都合が悪いことになってるんですよ……。宝箱あったところがモンスターとトラップの巣窟になってたり、転移陣のトラップで一人だけボスの間に送られたり……)
どうやらもうこういう事態にも経験しているようだこの勇者。
これだけ危ない目にあったらビビりとかも克服できなかったのだろうか。
「こんなモンスターが出るところでじっくり考えてもしょうがないでしょう。まずは迷宮都市に辿り着いてから考えた方がいいですわ」
「それもそうね。あんたらブツブツ言ってないで行くわよ」
「りょ」
「貴様に指図される言われはない」
ついさっきまで地図についてブツブツ言ってたミカエルに言われる筋合いはないが、渋々返事を返す。
すると我々は木に印をつけながら森を彷徨い始めた。
―|―|―
「水先案内人もいるかもしれないからちゃんと周りを注視しながら進みなさいよ」
「ダンジョンポイントを渡せば、地図くれるっていうあれか。さすがにこんな森の中にいるのかそいつ」
昨日マップに記述のあった水先案内人についてミカエルが注意を飛ばしてきたので、一応森の周りを見てまわるが謎の極彩色の鳥しかいない。
「うん。どうやらしがない愚民どもが戯れているようだな」
(大変です! 人が襲われています)
心の中で叫んだアイリッシュが見ている先を見つめると、村人と思しきロングソードを持った若者たちがハンドレッドエイプに囲まれていた。
迷宮都市の人間か何かだろうか。
アイリッシュの加護のことも在るし、見てしまったからには放っておくことはできないな。
「助太刀しに行くか」