五層17 吸血鬼
靄を追いかけて行くとやはり俺たちが泊まっている宿に一直線に向かっていることがわかった。
どうやら奴はこちらに危害を加える気満々のようだ。
探りを入れただけだというのにいきなり、実力行使に出るとは…。
このまま見ているわけには行かないので急いで追いかけていく。
「なんなんだあれは。靄纏ったまま空中を飛んでいく生物なんて俺は知らんぞ」
「私も直接見たことはないんですが、不屈さんによると吸血鬼にはそういう個体もいるとか」
「じゃああれは吸血鬼てことか。なんでそんなハイレートな奴がここに居座って俺たちに襲いかかってきてんだよ」
しばらく走っていくとやはり俺たちの宿の屋根にそいつが着地したのが見えた。
すかさず矢を放つが、注意を向けていたようで避けられた。
すると背後から光の斬撃が、奴のちょうど飛んだ先に飛んでいた。
斬撃は奴を再び真っ二つに裂くかと思うと、直前で奴は自ら体を裂いて、それを避けた。
「いかれてるな」
俺がそう呟くと靄の中から赤い瞳がこちらを睨みつけているのが見えた。
忌避感に襲われると奴は月を見て舌打ちをすると夜空に紛れてその場から消えた。