五層13 靄
「なんだか怪しいと思うとこの町もなんだかひどく胡散臭いものに見えてくるわね。探しても帰還用の転移陣がないし」
磔にされた女を担いで移動を始めた白装束の連中の後を追っていくとミカエルがそう呟いた。
前断固帰ると言っていたのに、なんで今回は何もいわないのだろうかと思っていたらそういうわけか。
もう帰るのはひとまずは保留にしたとかそういうことではないらしい。
「ここから出したくない理由があったりするのかもな」
そう返事をするとちょうど白装束たちは神殿の前で止まった。
どうやらここが奴らの目的地らしい。
喜ばしいことらしいが、葬式でもここで開くのだろうか。
「確か中は人が多かったな。このまま神殿の中に入っていたら十中八九、発見されてバレるな」
「僕が一人で潜入してきましょうか?」
「お前そんなことまでできるのか?」
「ここまで来るのに色々なことをしましたから」
イルマスはそう言葉を紡ぐとこちらの返事を待たずに、神殿の方に向けて駆けていた。
あいつは一体どんな人生を送ってきたんだろう。
想像するだけで大変そうだ。
それからイルマスは二十分そこらで戻ってきて中で起こった事を簡潔にこちらに説明した。
「黒い靄の生き物が磔になった人を喰らっていました」