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四層32 干渉
走馬灯のように周りの時間がゆったりと流れていくのを感じる。
これは自分は命の危機に対して起こっている反応ではないとわかった。
「せっかくの再会だって言うのに、記憶が完全に回復してないのはよろしくないな」
そのロールズの言葉で自分の記憶を彼が引き出そうとしているために起こっている反応だとファイルは悟った。
彼女の中で自分という自我が前世の記憶という不純物を取り入れないために精一杯の抵抗が始まる。
だが術式の展開の方が強力なようで、無理やりに記憶を解放されていく。
荒れ野をかけていく風景。
大きな化け物三匹と大太刀周りをする赤髪の女。
魔法使い然とした老人の群れ。
何かの儀式を執り行うロールズ。
これ以上はダメだと自分の根本的な何かが揺らぐような感覚に襲われ、ファイルは反射的に錬金術で周りの地形を歪める。
そうすると自分に干渉をかけられる感覚がスッと消え,解放されたのを感じた。
「自分が自分でなくなるのが怖いのか,師匠。俺は全部思い出してほしんだがな」