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四層30 使命
前世の記憶と現在の記憶が交差する。
迷宮の深度が増すごとに自分の中で自分を構成する部分がどんどんと追加され変容していくのを感じる。
自分はどうなってしまうのだろうか。
記憶の継承や転生はあまりにもケースや症例が少ないので、全く予想がつかない。
自分はファイルという名の記憶を持ったまま記憶の中の人物と同じようなものになっていくのではないかという一抹の不安。
そしてそれを覆い尽くすように生じてく気が狂いそうになるほどの使命感。
こんなリスキーなものは無視しなければいけない筈だというのにどうしても胸の中で、何かが『約束を果たさなければならない』とくちやましく囁いてくる。
その声に抗えずに進んでいくと大きな広間の中で記憶の中の少年を大きくしたような青年と顔を突き合わせた。