四層28 装置
ファイルは壁を『錬成』して開けた穴から通路を進んでいく。
至る所に少し形が歪な魔法陣の描かれた制御装置があることからここは迷宮を管理する中枢部分だろうと彼女は目星をつけていた。
なんらかの方法で上に這い上がるための機構がないかとずらりと並ぶ装置の群れに目を通すが、頭痛とともに朧げで淡い記憶の残像が脳裏に投射されるばかりでそれらしいものを見つけることができない。
幾重にも意気の強そうな少年が錬金術を教えろとせびってくる記憶の残像がだんだんと結びついて、実像を結んでいく。
思い出した…。
この魔法陣は錬金術式を転用したもの。
私が作り上げたものだ。
自分は作り上げていないというのに作り上げたという記憶だけがあることに寒気を覚えつつ、装置に触れる。
陣に刻まれた迷宮全体の情報が流れ込んでくる。
それと同時に攻略を続けるパーティーメンバーたちがどこにいるのかわかった。
彼らはちょうどホムンクルスと罠の地雷源に飛び込もうとしている。
この制御装置は彼らが飛び込もうとしている罠には繋がっていない。
繋がっている装置は50メートル先のものだ。
罠が発生するまでに操作できるか微妙な距離だ。
全力で走り、装置版に飛びつき操作する。
ちょうどこの罠に彼らのうち二人が落ちようとしていた。
急いで操作して罠の底に落ちるのを阻止する。
なんとか間に合ったようで、二人とも無事なのを確認すると彼女は脱力した。
この調子で彼らが向かう先の罠を解除していこうかと思うと、誰かの視線を感じた。
視線があっただろう場所を見ると,ファイルはどこか懐かしいような感じのする魔力の残滓を見つけた。
もしかしてと思い,装置に再び触れるとやはり干渉できないようにされていた。