四層㉗ 魔力
確か純粋な魔力には持ち主の存在を知らしめる力があるだったか。
魔術師とやり合っているときに師が俺によく注意してたな。
前もって意識しておかないと虚を突かれてあっという間にあの世生きだとか。
ファイルがそれをやったというのだろうか?
さすがにそれは魔力が壁を越えられない構造上無理だ。
奴がたとえ落とし穴の中から魔力を飛ばしたとしても届くはずがない。
だが事実俺はファイルの存在の圧のようなものを感じ取った。
それに何より、あのタイミングで落とし穴が消えたのがこちらに都合がよすぎる。
奴はこのダンジョンのトラップに一枚噛むような形で生きているかもしれない。
そうすれば、すべてのことの辻褄が合う。
そんなことを考えているとこちらに三つの石の弾丸が飛んできた。
かがんで避け、前方を確認するとホムンクルスが先ほどよりも増えていることが分かった。
先ほど二体だったのに、今は六体だ。
四体増えている。
どこから来た?
矢を打って一体ずつ処理しながら、確認すると先ほど奴らが現れた壁の向こうから湧いてきていた。
「壁の向こうから出てきてるな。おざなりにして後ろから攻撃されても厄介だ。行って叩くか」
「中もトラップがひしめていると思うとげんなりするわね」
「とりあえず、僕が先行するので後から罠の発生に注意しつつ、ついてきてください」
イルマスが壁の穴の向こうに先行し、俺もそのあとについていくと数体のホムンクルスと水槽の中に入れられたホムンクルスが幾体もいるのが目に見えた。