四層㉖ 繕い
確実にアイリッシュにばれたことが気になる。
自分の知っている限りでは表情に一つの変化もなかったはずだが。
いきなり地面から突き出した杭をよけつつ、思いを巡らせる。
奴が俺のウソに気付いたのはいつからだろうか。
目星としては先の事が決定的なことだったので、つい先ほど気付いたと思いたいが、いかんせんこの前のリッチャンの件でばれたことも考えられるのでなんとも言えない。
取り合えず、この切迫した状況でそれの考えを深めるのは危険だ。
原因がわかったところでこれ以上不信感を招いてもしょうがないし、考えに気を取られて、罠にかかる可能性が大きい。
この段階で止めて、対処のことを考えなければ。
具体的な対処としては出来るだけ嘘をつかないということだ。
とりつくろえば怪しさが増すし、嘘の繕い方を強化しても奴がどうやって見破っているのかわからない以上ばれる可能性が高いのだからこれが最善だろう。
不信感を取り除く具体的な方針を決めると左右の壁が開き、いきなりホムンクルスが現れた。
すでに魔法の詠唱と謎の魔法陣を空中に表示させている。
避ける態勢を整えると同時に、氷と岩の弾丸が飛んできた。
横に飛びつつ、壁にナイフを投げつけその上に乗る。
地面を警戒しての行動だったが功を奏したようで、続けざまにトラばさみや落し穴が地面から生じた。
体力の底が近かったグラシオとエリアは続けざまに生じたトラばさみや杭をよけるが、ついに体力が底をついたようで落し穴に突っ込みそうになる。
まずいと思いと思いナイフの上から飛び出そうとすると不思議と穴は閉じた。
何が起きたかと困惑するとなぜかファイルのことが脳裏をよぎった。