四層22 驚異
イルマスが指示を飛ばすと皆各々で生じる罠にみごとに対応した。
驚異的なことだ。
普通のパーティーならば瞬時の対応に秀でている近接職以外は脱落している。
俺が思っているよりもこいつらは冒険者としての能力が高かったらしい。
後衛の何人かは脱落か、フォローが必要になると思っていたのに唐突に形作られる罠に危なげなく対応したのだ。
鳥が地上で犬と遜色ない動きを披露するようなものだ。
並大抵のことではない。
だがこのボスの間の罠はそのキチガイじみた対応力の上を行っていた。
10メートルほど進んだ時点で生じた罠の数は20以上。
多すぎる故に数えてはいないが,今現在少し進んだだけで100以上の罠が発動している。
エリア、グラシオ、ファイルは息を荒くして疲弊が激しいことが一眼で分かった。
遠からず息を上げた誰かが脱落するのが目に見えている。
休憩させて体力を回復させたいのは山々だが、こちらが止まったからと言ってトラップが止まる保証はない以上それはできない。
もしそうだった場合、今大丈夫なメンツも巻き添えを食う可能性が高い。
進むしか道はない。
ゼエゼエと荒い息の音が激しくなると、ファイルの前に落とし穴が出現し、回避したその先にも落とし穴が出現した。
ファイルは対応できずに穴の中に落下していた。