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忍のお仕事  作者: やまもと蜜香
第三章 【道場】
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其の五 カンサイ先生

 遊好館道場の規律がゆるいのは、道場内の様子からも見てとれる。だが、そんな道場でも指導方針というものはある。


【三種類以上の武器を扱えるようになること】


 これが遊好館が門下生に課す目標であり、入門者はまずこの課題の達成を目指すことになる。

 そしてさらに補足事項として、次のように定められている。


【扱う三種類の武器の一つは刀剣とすること】


 刀にやたらと執着の強い武士はもちろんのこと、その他の層も含めて、世の中で最も多く使用されている武器が刀剣である。

 ゆえに、いざ戦闘となった際、襲いくる相手は刀剣を手にしている可能性が特段に高いのだから、敵の勝手を知るためにも、自らが刀剣を扱えるようになっておくという方針なのだそうだ。

 ただし、極める必要はない。ある程度、刀剣を使いこなせるようにさえなれば、あとは自分が主とする武器を極めればよいとされている。

 もっとも、自分の主な武器に刀剣を選んでしまえば、使う武器は二種類でよいことになる。


 このように、遊好館では門下生が使用する武器の種類を制限しない。剣に気合いと魂を込めて日々ぶつかり合う一般の剣術道場とは性質が異なるところであり、「女の遊び場」などと陰口を叩かれる理由もこのあたりにある。

 そんな遊好館の性質は、館長のユデが道場を創設するに至ったいきさつに関係する。


 若い頃のユデは、世の中に存在する武具の研究者であった。彼は研究のために全国各地を巡っては、様々な武具を収集した。

 武具によっては現存はしておらず、口伝・伝聞といった形で地域の人々の間に語り継がれているものもあり、そういったものは口伝や文献を基に、ユデ自身が製造復元を行った物も少なくない。そうして収集を続けていくことで、次第に彼は数多くの武具を所蔵するに至った。

 だが、ユデの研究は、ただ単に武具を収集することに留まらなかった。 彼は、それらの武具をどのようにして使用するのかを解き明かすことまでが、後世に伝える価値のある研究の成果であると思い定めていたのだ。

 しかし、それら武具の多くは、形として残ってはいても、もはや武器として廃れてしまい使い手がおらず、本来の使い方が分からない物となっていた。ユデは試行錯誤してそれらの武具を使ってはみたが、果たしてそれが本来の正しい使い方なのかも分からず、彼は自身の研究に限界を感じた。


 研究に行き詰り、鬱屈とした日々を過ごすユデであったが、あるとき彼は思いついた。彼は自ら武道場を開き、所蔵している武具を門下生に貸し出すことにしたのだ。

 思考というものは人によって様々、同じ素材を手にしても、自分には思いも寄らぬは使い方を考えつくもの。これによって、一人で考え続ける限界を超える研究成果を求めたのだ。


 現在、ユデが所蔵している大量の武具は、道場に併設された倉庫の中に並べられているという。

 ユデの経営する遊好館道場の門下生となったことで、エンにも武器庫への立ち入りと、それらの武具を使用する許可が与えられた。


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